「毎年ひとりで線香を」“新総裁” 石破茂氏の仰天秘話…イージス艦と衝突した漁船遺族を訪れ、秘密のバーベキュー
9月27日におこなわれた自民党総裁選。決選投票で、石破茂氏は215票(国会議員票189、地方票26)を獲得。194票(国会議員票173、地方票21)だった高市早苗氏をおさえ、新たな総裁に選出された。 【写真】2017年夏のバーベキュー、毎年恒例の行事になっている 「“5度めの正直” ですね。これまで、総裁選があるたびに立候補してきたものの、党内政治に疎く、支持者が集まりにくい石破氏は毎度のこと落選してきました。 政策論に強く、頭の回転も早いのですが、いかんせん弁舌の鋭さやビジュアルとしての爽やかさに欠けていました。今回は、麻生太郎氏が高市氏支持を表明した結果、“反麻生派” が一気に石破氏に流れたということでしょう。 これまで常に自民党の “主流派” と距離を置いてきた石破さんですから、裏金問題で揺れる自民党を浄化してくれるのではないかという期待も込められているでしょう」(政治担当記者) 本誌は、そんな石破氏の意外な姿をキャッチしている。少なくとも、新総裁の政治手腕はさておき、“義理堅さ” だけは間違いないようでーー。 悲しい事故が起きたのは、2008年2月19日のこと。海上自衛隊のイージス艦「あたご」と、漁船「清徳丸」の衝突・沈没事故が起きたのだ。清徳丸船長の吉清治夫さん(当時58)と長男の哲大さん(同23)が、帰らぬ人となってしまった。 治夫さんの自宅だった家にひとりで暮らす、治夫さんの妹・吉清美恵子さん。2020年、本誌の取材に「事故当日、現場の野島崎沖は穏やかだった」と語っている。 「私、穏やかな海を見るのが好きじゃないんです。事故のときも暖かくて、風がなくて、穏やかな海だった。だから、事故の日を思い出しちゃって、涙が出るの」(美恵子さん、以下同) 美恵子さんは、「いまだに亡くなった2人が夢に出る」と言う。 「川津港の港口を見渡せる高台に、2人のお墓があります。私は港口を、まともに見られない。でもね、いつも2人は一緒に、いい顔で夢に出てくるの。それが救いなんです」 それでも美恵子さんは、「誰かを恨むこともない」という。 「今年で13回忌。毎年2月の命日には、海上自衛隊の方が来てくれます。それから、石破茂さんが、毎夏のお盆に、ひとりで線香をあげに来てくれるので、みんなでバーベキューをするんですよ。 石破さんは、『なにか困ったことある?』と、いつもいろいろと愚痴を聞いてくれる。私と同世代ということもあって、キャンディーズの話で盛り上がったりね(笑)。おかげで、ここまでやってこられました。人を恨まないで、なんとか……」 石破氏は、事故当時、福田康夫内閣の防衛相だった。なんと、元防衛相として衝突事故の遺族を毎夏訪れ続けていたのだ。 本誌が当時、石破氏に取材を申し込むと、「こんなことがニュースになるの? このことを話すのは初めて。もう13回忌だよね」と感慨深そうに、こう続けた。 「美恵子さんは、お話し好きな方でね。でも、悪口や恨み事はまったく言わない。私こそ、感謝しているんです」 石破氏は、事故2日後に担当大臣として吉清さん宅を訪れたことを、鮮明に覚えている。 「ご遺族から、どんな罵詈雑言を浴びても『とにかく海上自衛隊の信頼回復につとめるしかない』と思いましたね」(石破氏、以下同) 誠心誠意、情報は隠さず、説明する。その方針を貫いたため、新事実が出るたびに訂正を重ねることに。石破氏の辞任を求める声も高まった。 「しかし、事故後しばらくしてから、福田総理がSPも秘書官もつけず、ひとりで勝浦を訪問されたんです。そのとき、ご遺族、ご親族が連名で、『辞めさせることだけが、責任の取り方ではない。再発防止の方策をしっかりと確立してもらいたい』という内容の手紙を、福田総理に託された。 おかげでそれから半年間、私は再発防止策と、防衛省改革に邁進できたんです」 防衛省の「改革案」をまとめた後の2008年8月。内閣改造に際して、「けじめをつけたい」と留任を固辞。福田首相も受け入れた。 「大臣から外れてすぐに、線香をあげようと、ひとりで電車に乗って勝浦に向かいました。ご遺族とご親族が20人ほど集まってくれてね。『供養だから一杯やろう』と、伊勢エビやサザエを食べて、お酒を飲んで。 『福田さんにも持っていってよ』と、30kg近い海産物のお土産も持たせてくれた。総理公邸で、福田総理と食べましたよ(笑)。 2009年の総選挙のときには、みなさんで私の地元・鳥取まで応援に来ていただいた。そんなご縁がいただけるとは、思いもしませんでした。 御霊に対する思いもあるし、ご遺族とご親族への思いもある。議員であるかぎり、できればこのまま、毎年お邪魔したいと思っています」
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