捜査員が激怒「これが危険運転でなければ、何が危険運転に当たるんだ」 酒を飲み時速140キロ、被害者を60メートルもはね飛ばしたひき逃げ犯は「過失致死」に問われた
▽ドラレコに写る事故までの8分の真実 この車は、なぜこんな無謀な運転をしていたのか。ドライブレコーダーには事故前後の約8分30秒の映像記録が残されていた。再現すると、次のようになる。 同じ日の午前0時50分すぎ、車は神戸市兵庫区の繁華街近くにあるコインパーキングの敷地内にあった。運転席の被告と、助手席の女性の会話が聞こえてくる。 被告「姫路に行こう」 女性「○○(女性の自宅のある地名)に送ってくれる?」 被告「大丈夫だよ」 裁判記録によると、被告はこの時、2軒の飲食店で酒を相当量飲んでいるが、車を運転して、兵庫県姫路市の自宅へ帰ろうとしていた。女性とは飲食店で知り合ったという。車は約3分後に発進。ところが、まず出口の精算機に車をぶつけた。物損事故だ。 その後、車は路地を抜け、大通りに面した交差点前に着いた。 赤信号で停車した被告。「おれ酔ってる?しらふやから」。ここで右折すべきところ、被告は誤って左折した。ここから、運転が急変する。
左折して片側4車線の道路を少し進んで交差点に差しかかると、再び赤信号に。ところが、停車せずにUターンして対向車線へ入った。女性は恐怖を感じたのだろうか、「怖いって!アカンって!」と叫ぶが、被告は次の交差点でも赤信号を無視。その次の交差点の赤信号で、ようやく停止した。 青信号に変わった直後、車は急発進する。事故の約40秒前だ。「止まって!本当に怖い!やめてって!」と懇願する女性の声が響く。 道路はほぼ直線。車は時速約140キロへと加速。被告は前を走る車を抜かそうと、車線変更して交差点に入り、さらに右へと車線変更したとき、左から車線変更してきた三輪バイクが見えた。後ろから衝突。吹き飛ばされる李さんの姿が一瞬だけ映し出され、あっという間に視界から消えた。 鈍い衝突音の後で、ボンネットから立ち上がる白い霧のような煙に視界が覆われたが、車はそのまま走り続ける。「やばいことになったな」とつぶやく被告の声。助手席の女性は叫び続け、自動車保険の会社へ自動でつながるガイダンスの音声が流れた。およそ40秒後、衝突現場から約670メートル離れた路肩にようやく停車した。