謎の絵、部屋のレイアウト…アパホテル、東横インなどビジネスホテルでも「高級」に感じる“衝撃の理由”
宿泊した際ふと客室に飾られた絵画などのアートワークに目が止まったことがある人も少なくないだろう。今回はビジネスホテルとアートの関係から、ホテルジャーナリスト・高岡よしみ氏に加熱する業界を取り巻くトレンドを紐解いてもらった。 【写真】定年後に「持ち家を売った」年金暮らし夫婦たち、そのヤバすぎる末路
アートで誘客を図る高級ホテルも
「アートと観光、あるいは地域活性化の組み合わせは相性が良く、アート体験そのものが宿泊や滞在の目的となるようなラグジュアリーホテルも全国的に増えています。 直島の「ベネッセハウス」や群馬県前橋市の「白井屋ホテル(SHIROIYA HOTEL)」、軽井沢や京都などに展開している「HIRAMATSU HOTELS」や、「アンテルーム京都」などのホテルが代表的です」 ファッション業界でハイブランドの流行をファストファッションが取り入れるのと同じように、高級ホテルや観光の大きなトレンドを踏まえ、大手ビジネスホテルもアートを取り入れている面は確かにありそうだ。 それにしてもだ。ビジネスホテルのアートには少し違和感を抱かせるものがある。“経済的合理性に欠ける”と言ってもいいかもしれない。 まして大手ビジネスホテルだ。まさか全国の一つ一つの客室に希少な一点モノの作品を飾るわけにもいかない。アメニティや食事、宿泊料金やその他の設備・サービスに比べ、ホテル選びの場面で直接的な宿泊動機になる要素とも思えないのだが……。 「結局、客室のアートワークというものはホスピタリティをわかりやすく可視化したものなんです。ホテルは誰にでもウケが良い空間づくりが求められるため、基本的に強烈な個性は出さず、調度品も壁紙も簡素でシンプルなデザインになりがちで、ともすれば無機質で殺風景な印象の部屋になりやすい。 とくに最近新たに開業したホテルの客室は、スイッチ類や充電設備も枕元から手に届く範囲に完備されていて、とくにミニマムなつくりが多いですからね。そんな機能重視の客室に彩りを添えるのが絵画で、そうしたアートによって演出される居心地の良さは確かにあると思います」 また、需要の高まりで都市部や人気観光地では宿泊料金が高騰しているビジネスホテルだが、“単に値上げするだけ”では、従来の日本人の利用者が離れてしまう懸念もある。人手不足の問題も抱えるなか、新しい付加価値として絵画を飾ることは合理的でもあるという。 「壁紙や家具よりも段違いにローコストで、清掃やメンテナンスの手間も増えないのは、絵画の大きなメリット。床面積を確保しにくいミドルクラス以下のビジネスホテルの客室でも絵画なら問題なく飾られるし、破損・汚損した場合も掛け替えるだけ。リトグラフやシルクスクリーンの作品をリースするかたちなら、さらにコストを抑えられます」