韓国で感染拡大中 「MERS」ってどんな病気なの?
いま韓国で「MERS」(中東呼吸器症候群)という病気が流行しています。6月3日時点で2人が死亡し、1300人以上が隔離されるなど感染が拡大しつつあり、現地では危機感が高まっています。このMERS、聞きなれない名前ですが、いったいどんな病気なのでしょうか?そして、どんなことに気をつければ良いのでしょうか? 厚生労働省やWHOが発表している最新の情報をもとに解説します。
●どんな病気?
MERS(中東呼吸器症候群)は、2012年に初めて確認された新たなウイルス性感染症(インフルエンザのように、ウイルスが原因で広がる病気)です。 主に中東地域(UAE、サウジアラビアなど)で感染が拡がっているため、このように名づけられました。原因となる病原体は「MERSコロナウイルス」と呼ばれています。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群・SARS(サーズ)の原因となった病原体もコロナウイルスの仲間ですが、SARSとMERSは異なる病気です。 主な症状は、38度以上の発熱、せき、息切れです。下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。感染しても症状が現れない人も多いのですが、免疫力が低下している場合、たとえば糖尿病や腎臓病にかかっている人などは重症化し、場合によっては死に至ることもあります。
●どのように感染する?
WHOによると、主な感染源はウイルスに感染した動物や適切な処理をしていない食べ物、そして人間とされています。どのような方法で感染するのか、感染力はどのくらいなのかなど詳細は明らかになっていないのですが、これまでの調査では、集団生活をしている地域では感染が起こりやすいようだということがわかってきています。
●なぜ今回、急に拡大?
今回、韓国で急激に感染が拡大した最大の原因は、早期に診断と隔離ができなかったことです。最初に報告された68歳の男性患者の場合、4月中旬から5月初旬にかけて中東地域を旅行した際にウイルスに感染したと思われますが、韓国に帰国したときにはまだ症状が出ていませんでした。帰国から1週間後に発症し、3か所の病院で治療を受けましたが、MERSとは診断されませんでした。4か所めに受診した病院の医師がMERSを疑い、詳細な検査が行われたことで感染が判明。症状が出てから、10日目のことでした。男性はすぐに隔離されたものの、それまでに接触した家族や、同じ病院に入院していた人を中心に感染が拡大してしまいました。 先述のように、MERSの症状は発熱・せき・息切れなど他の病気でも良く観察されるものであり、特に発症してすぐは、かぜや肺炎などとはっきり区別するのが難しいという特徴があります。誰にも気づかれないでいるうちに、ウイルスが人から人へと拡がってしまっていたのです。