アングル:中国本土株の投機買い過熱化、外国投資家も追随の構え
Tom Westbrook Samuel Shen [上海/シンガポール 20日 ロイター] - 中国本土の株式市場で投機的な買いが過熱化し、一部の世界的な投資ファンドの注目を集めている。これらのファンドの考えでは、関税の影響を免れて最終的な景気回復の流れに乗れそうなセクターに向かっている中国国内の資金に追随する価値はあるという。 9月に中国政府が一連の景気刺激策の実行を表明すると、香港株は記録的な上昇率を記録し、本土株も2年ぶりの高値に達した。 その後景気刺激策の柱として大規模な財政支出が見当たらなかったことからいったん熱狂が冷め、特にトランプ次期米大統領が政府の要職に対中強硬派を起用する中で、多くの有力投資家が買い持ちのまま踏ん張らず、利益確定売りに動いた。 ただこれによって香港株は反落したものの、本土株はギアが切り替わり、家計の貯蓄が有望銘柄に流入する構図が浮き彫りになっている。 個人投資家のルー・デロンさんは「投機対象として注目されているどんな銘柄にも資金が向かうだろう」と語り、自身も株式に200万元(4290万円)を投じて9月下旬以降に40%の利益を得た。 ルーさんは中国のハイテク企業株の上昇に賭けている。当局は米国が発動する可能性がある輸出規制からこれらの企業を守る措置を講じると見ているからだ。購入したのはコンピューターメーカーの長城科技や、通信大手の華為技術(ファーウェイ)と取引がある維信諾科技(ビジョノックス)で、9月下旬から株価は2倍に跳ね上がった。 「ハイテク株の場合、イノベーションが不成功に終わったかどうか初期段階でははっきりしないので投機が入り込む余地が出てくる」とルーさんは話した。 投機熱が証拠金取引拡大にもつながり、データイエスによると足元では証拠金ローン残高が1兆8500億元と9年ぶりの高水準になった。 ここ2カ月の上海総合指数の1日当たり平均売買高は過去10年平均の2.5倍で推移。さらに値動きを見ると、スタートアップ企業で構成するBSE50指数は9月下旬からの上昇率が112%と、上海総合の12%を大きく上回るペースだ。 上海半夏投資管理中心の創業者リー・ベイ氏は投資家向けの書簡で「ファンダメンタルズを気にしない投機資金と個人投資家には依然として熱気がある」と記した。 そのベイ氏も9月に運用資産における株式の比率をネットベースで50%近くと9カ月ぶりの水準まで引き上げ、国有の建設企業や不動産セクターを重視している。これらの銘柄は近年の急落で割安化し、持ち直しを期待する買いが入りつつある。 深センの株式コンサルティング会社幹部によると、投機熱はデリバティブにも波及し、株価上昇に賭けるオプションの取引が急増しているという。 <大手投資銀も推奨> 香港のハンセン指数は10月の高値から15%下落し、多くの外国人投資家が売りに動いていると読み取れる。 フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、ジョージ・エフスタトプロス氏は「われわれは(国内投資家向けの)中国本土A株、その中でも特に中型株に乗り換えている」と明かした。 エフスタトプロス氏は香港株に対して売りの姿勢で、その理由は米金利動向により敏感と見なしているため。「逆に本土A株は米金利の影響が乏しく、中国国内の流動性や財政刺激に動かされやすい」と説明する。 ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、HSBCといった大手投資銀行も最近公表した調査ノートで、景気刺激策の恩恵や中国国内資金の流れを挙げて本土株を推奨している。 HSBCのストラテジストチームは19日のノートで「中国本土には銀行預金に20兆ドルを超える資金が存在している。これは本土A株市場の時価総額の2倍で、その資金の一部がじわじわと株式に振り向けられつつある」と指摘した。 中国の投資家と外国人投資家はいずれも、貿易摩擦の高まりで中国は自給体制に移行すると想定し、特にこれまで外国勢に流れていた売上高を確保できそうな中国の半導体メーカーに買いを入れている。 フランクリン・テンプルトン傘下のマーチン・カリーの最高投資責任者で220億ポンド(4兆3300億円)前後を管理運用する株式専門ファンドマネジャー、マイケル・ブラウン氏は「きっとあと1つか2つの景気対策が出てくる。われわれは株価が上昇する局面に備えており、そうした局面はやってくるだろう。中国株トレードは投資家全員を絡め捕る可能性がある」と述べた。