沖縄知事選がつきつける「民主主義」の意味
普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を掲げた前衆院議員の玉城デニー氏が勝利した沖縄県知事選。この選挙が問いかけるものは何なのか。政治学者の内山融・東京大学大学院教授に寄稿してもらいました。 【写真】「最後の3年」安倍首相 性急な改憲議論に立ちはだかるハードル
安倍政権の基地問題への姿勢
9月30日、沖縄県知事選が行われ、玉城デニー氏が佐喜真淳氏を破り当選した。与党が総力を上げて応援した佐喜真氏が敗れた一方、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を旗印としてきた玉城氏が勝利したことは何を意味するのか。ひとことで言えば、安倍政権の沖縄基地問題に対する姿勢が大きく問われているということだろう。 故翁長雄志前知事は辺野古移設阻止を掲げ、予定区域の埋め立て承認を撤回するなど、安倍政権への対決姿勢を強めていた。現在工事は一時中断しているものの、政府は辺野古移設が「唯一の解決策」だとして、法的措置を講じて移設を進める構えである。このような中で翁長氏の後継とされる玉城氏が知事に選ばれたことは、沖縄県民が基地問題への政権の対応に突きつけた異議の大きさを物語っている。 では、今回の選挙結果は国政にどのような影響をもたらすだろうか。 まず、玉城知事の就任により、政権が描くスケジュール通りに辺野古移設が進まなくなる可能性が高まった。総裁3選後の安倍首相は憲法改正に注力する考えを見せてきたが、辺野古問題の扱い方によっては、憲法改正に注ぐエネルギーが限られてくるかもしれない。 与党系候補の敗北が、来年に予定される統一地方選や参院選で与党への大きなマイナス材料になるとの指摘もある。この敗北が安倍政権にどれだけの打撃となるかは、政府の基地問題への姿勢に世論がどれだけ批判の目を向けるかによるであろう。もし全国的に安倍政権の手法に批判が高まれば、今後の政権運営や、来年の統一地方選・参院選にも相当響いてくるであろう。反対に、今回の結果は沖縄だけのこととして全国の世論が関心を向けなければ、それほどの影響はないのではないか。