決勝進出!卓球女子・和田なつき「良いことをすれば、良いことが返ってくる」崖っぷちを跳ね返した“いつもの心がけ”【パリ・パラリンピック第9日】
パリ・パラリンピック第9日の9月5日、卓球女子シングルス(T11=知的障害)の準決勝が行われ、和田なつき(内田洋行)がエブル・エイサー(トルコ)に3ー2で勝利し、決勝進出を決めた。同じく準決勝に進出していた古川佳奈美(えん・コミュニケーションズ)はエレーナ・プロコフェワ(中立選手)に2ー3で敗れ、銅メダルとなった。決勝は、同日夕(日本時間6日午前0時)に開始となる。 パリの大舞台で雪辱を晴らした。 対戦相手のエブル・エイサーには、今年6月にスロヴェニアで対戦し、3ー0でストレート負けしていた。だが、ここで落ち込むことはなかった。結果だけを見れば完敗だったが、「勝てない相手ではない」と思って練習を重ねた。 「サーブが速いので、昨日からブロック練習をしたり、わざとタイミングの速いサーブを出してもらって、自分がどう対応していくかを確認しました」 それでも前日の練習では自分のイメージ通りの動きができず、絶望的な状況に陥ったという。こんな時、和田はいつも泣く。 「エイサー選手は隣でノリノリで練習してるのに、私は大号泣で。今朝もプレッシャーでずっと泣いていました」 それでも、卓球を始めて世界で戦うようになってから、決めたことがある。泣きたい時は、思いっきり泣く。 「泣きたいんだったら1分間だけ思いっきり声を出して泣いて、1回スッキリして、次にどうするかを考える。泣くのも自分なのかなと思ってます」 いざ試合が始まると、プレッシャーは消えていた。第1セットを9ー11で落としたが「悪い感じはしなかった」という。 第3セットまでで1ー2で迎えた第4セットで6ー9になり、あと2点取られると敗北という崖っぷちに追い込まれた。そこから5ポイント連続で奪取して、試合の流れが変わった。 「銅メダルも確定していたので、私の中では『負けは終わりじゃない』と思って安心感もあったので、『どうやってこの一点を取ろう』としか考えてなかったです。『これに勝ったらカッコいいんだろうな』という感じでした」
タイムアウトから試合に戻る前には、日本から駆けつけた応援団に向かって頭を下げて一礼した。 「私は『いいことをすれば、いいことが返ってくる』と思っているので、大会の期間中もゴミが落ちていたら拾ったりしていました。それがネットインの1点にもつながるかもしれないし、(応援してくれる人に向けて)お辞儀をすれば、こんな子がいるんだと思って応援してくれる人もいるかもしれない。日本と同じことをしました」 激戦を制した後、涙を流しながら永富聖香コーチに駆け寄って喜びを分かち合った。二人で話したことは「もう1試合できる」。相手は東京パラリンピックの王者だ。初出場で世界の頂点に挑む。 (西岡千史)