「嫌がられるセッターに」女子バレー岩崎こよみ(35歳)が、荒木絵里香にいま明かすパリ五輪の真相「あのゲームであの1点が取れていたら…」
とにかく悔いなく戦えるように
荒木 そして第3戦。この試合も難しかった。ドミニカ共和国がオランダに3‐1で勝った結果を受けてのケニア戦となり、どのようなミーティングや話をしてゲームに入っていったのですか。みんなで見ていたの? 岩崎 見ていました。バスが試合会場に到着するころにオランダがセットポイントを獲ったんですよね。それで、「あ、フルセットまでいくね」という雰囲気だったんですけど、着くと同時ぐらいにドミニカがダダダダっと追い上げてきて、勝って。翌日のアメリカ対フランスの結果次第ではありましたが、ほぼほぼアメリカが勝つだろうと(フランスがアメリカにストレートで勝つと日本は準々決勝に進出)。 (古賀)紗理那が引退を表明していたので、本人は言わないですけど、周りは彼女にとって最後の試合になるって思っていましたし、自分たちにとってもパリ五輪でできる最後の試合になるから、とにかく悔いなく戦えるようにというのはありましたね。でもスタッフは結構、落ち込んでいるというか、暗いなぁと思いました。 荒木 スタッフ頑張れ~、そこは嘘でも明るくいって欲しい~。 岩崎 ふるまい、難しいですよね。試合直前だったのでミーティングらしいミーティングはできず、練習前の声掛けくらいで。「最後、みんなで出し切ろうね」と。
相手に嫌がられるセッターに
荒木 きつかったね……。初めての、15年越しの五輪を経験して得たこと、気づきがあれば教えてください。 岩崎 ここぞというところで自分の100%以上の力を出せるには何が必要なのかと考えさせられたのが一番。もっと戦術の勉強をしないといけないし、今回は合わせる期間が短かったため、データを頭に入れて監督に言われたことを忠実にやることしかできなかったのですが、そうではなくて、自分が駆け引きを楽しむとか、相手の意表を突くプレーや考え方をもっと身につけないと自分も楽しくないし、日本が勝っていくうえでも難しいと思いました。 荒木 プラスアルファということだよね。 岩崎 相手は決められたらそこをマークしてくるし、体格差でもかなわないところがあるので、戦術でいかないと。相手に嫌がられるセッターになりたいと思いました。 もうひとつ。自分の経歴を見たら、「五輪に出た」ことが目につくと思うんです。実際のところ、五輪は目標にもできないくらい上の舞台だったので出られて光栄でしたし、楽しくわくわくもしたし、辛い思いもたくさんしました。ただ、五輪で予選敗退したことよりも辛いことをいっぱい経験してきたし、五輪の切符を取った時よりも嬉しいことがこれまでの人生にはあったこと、それらの経験の大切さは変わらないなと。それは嬉しいなと思いました。いろいろな経験させてもらってありがたいことだと、五輪に出てあらためて感じました。 荒木 ここまでの歩み、キャリアは、間近で見てきた者として、本当にすごいと思います。よくここまで、あらゆる苦しいところを乗り超えて長く続けているのは、選手としても、人としてもすごいこと。激動のシーズン、お疲れさまでした。さまざまな思い、これから始まる新リーグにぶつけてください。 ではここからは、お互いに共通するプレイヤーと母親の両立について話しましょうか。
(「NumberPREMIER Ex」NumberWeb編集部 = 文)
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