地域おこし協力隊〝お試しツアー〟 農業体験と住民との交流で町の良さ知って 茨城・城里
若い働き手不足に悩む地方自治体が農業などさまざまな分野で地元以外の人材を受け入れ、将来的な定住も期待して全国で行われている取り組みが「地域おこし協力隊」だ。各自治体がどうやって隊員を集めようかと知恵を絞る中、茨城県城里(しろさと)町は協力隊に興味を持つ人らを地元へ招待。農作業を体験したり、町の住民と触れ合えたりできる〝お試しツアー〟を今春、開始した。 ■まずは〝プチ農作業〟 城里町は茨城県の西北部に位置。総面積の約6割が森林という緑豊かな地域で、コメや茶、ネギなどを産出する。人口は約1万7000人で、うち65歳以上の高齢者は約4割と県平均(約3割)を上回る。 今回のツアーは「地域と人、人と人が農業でくっつく町、城里」という意味合いを込めて〝くっつく〟と名付けられた。 5月中旬の土曜日。町役場に集合したくっつくの参加者は20代から50代までの男性5人、女性12人の計17人。県外からは東京都と埼玉県から5人で、12人が茨城県内在住だった。 一行を乗せたバスは、まず町内のサツマイモ畑へ移動。参加者は先輩協力隊員のアドバイスを受けながらイモの苗植えを体験した。大半が初めての作業だったが、中には「祖父母がサツマイモの専業農家で、少し手伝っていた」と慣れた手つきの女性もいた。 昼食は、目の前を流れる那珂川の景色を楽しみながら、カフェで地元産の野菜などを使った自慢のメニューを満喫。午後には茨城三大銘茶の一つ「古内(ふるうち)茶」の茶畑を訪れ、生産者から栽培上の苦労や「一番茶と二番茶の違い」などについて教えを受けた。 ■協力隊員の心得 最後は、江戸時代中期に建てられた国登録有形文化財の古民家「島家(しまけ)住宅」を訪問。ここでくっつくの一行を出迎えたのが埼玉県出身の元地域おこし協力隊員で、現在は町内で黒毛和牛の繁殖と販売を手掛ける近藤修さん(41)、友香さん(41)夫婦だ。 近藤さんはサラリーマンからの転職組。東京都内で開かれた協力隊のPRイベントで、城里町が牛を育てる隊員を募集しているのを知り、応募した。2年半、農家で牛の飼育を学んでから独立。今はメス牛29頭の世話をしている。