アルバルク東京のシューター安藤周人、悩み抜いた末に気づいた初心の大切さ「やっぱりシュート第一で攻める気持ちを強く持ちたい」
「やっと自分に合っているモノに気付けたと思います」
今年で30歳と安藤もベテランの域に達してきた。キャリアを重ねる中で個人のエゴを消し、仲間の持ち味を生かすための献身的なハードワークもより強みになってきた。だが、チームファーストの姿勢に重きを置くあまり、良くも悪くも強引さが減り、安定感と引き換えに怖さがなくなりつつあったのも事実だ。 そういった変化に安藤自身は、どこかで違和感を感じていた。「去年に関してはシーズンを通して、何をしたらいいのかなという感じでした。CSだけでなく、シーズン全体で納得がいくものではなかったです。今シーズンはしっかりと割り切ってやりたいです」 このように安藤は、昨シーズンの苦悩を明かす。その上で導いた『割り切る』姿勢とは貪欲に長距離砲を狙っていくことだ。新シーズンでは、次のマインドセットで臨むという。「2番ポジションとしてピック&ロールも使わないといけない、アシストも増やしていきたい、という考えでした。でも、ここ最近思ったのは、(そういう部分を強く意識するのは)自分の性に合わない。そんなことばかり考えているからうまく行かなかったと。まずは、やっぱりシュート第一で攻める気持ちを強く持ちたい。その姿勢でやることで練習中も良い感じですし、自分の性格にも合っています。30歳になってあらためて気づけたところで、去年とは違う、貪欲に点数を取りに行く姿を見せたいです」 そして、安藤は「もちろんパスやリバウンドも大切です。ただ、自分にとってシュートを入れることの楽しさがバスケットボールの始まりでした。全力で点数を取りに行って楽しむことを目標にしたいです」と語る。 『バスケを楽しむ』という言葉だけを見れば、とてもシンプルだ。しかし、様々な役割にトライし、試行錯誤を重ねた上で辿り着いた答えであることに大きな意味がある。一見すると回り道に思えるかもしれないが、安藤はこれまでの歩みは大切なものだったと言い切る。 「ここに来るまでいろいろと考え抜きました。名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)にいてスタッツが1番良かった時はその考えだったのが、スタッツもどんどん下がっていく中で考え方が変な方向にいってしまいました。去年のシーズンがあったからこそ、自分の性格に合っているプレースタイルがどんなものか深く考えることへと繋がりました。やっと自分に合っているモノに気付けたと思います」 最後に安藤は、A東京ファンに見せたい新シーズンのプレーをこう締めくくってくれた。「新しいというより、戻った自分を見せたい。どれだけシュートが外れても打ち続ける、得点を狙って楽しんでいる姿をお見せできたらと思います」 ちなみに安藤の最もスタッツが良かったシーズンは2018-19シーズンで、平均14.6得点、3ポイントシュート成功率は40.8%。さらに3ポイントシュート成功本数はリーグトップで、一瞬の隙も逃さず積極的に放つ長距離砲で、相手に大きな脅威を与え続けていた。原点に立ち返った安藤が、この時と同等のパフォーマンスを見せることができれば、A東京の王座奪還はより現実的なものとなる。
鈴木栄一