「突っ張り棒」の会社が「10年に1度あるかないかの大ヒット」…壁や天井を傷つけない壁面収納「ラブリコ」
平安伸銅工業「LABRICO(ラブリコ)シリーズ」
ホームセンターなどで売っている木材の先端に取り付けるだけで、壁や天井を傷つけずに、簡単に棚や壁面収納を作ることができる。収納用品メーカー「平安伸銅工業」の「LABRICO(ラブリコ)」は、DIY(日曜大工)感覚で手軽に取り付けられるパーツだ。2016年の発売以降、累計500万個を販売するヒット商品で、業績をV字回復に導く起爆剤となった。(坂下結子)
突っ張り棒は「やり尽くした感」
3代目社長・竹内香予子(41)は、強い危機感を抱いていた。「突っ張り棒に続く、売り上げの柱となる商品を作らないといけない」 同社の主力商品は、1975年に販売を始めた突っ張り棒だ。高いシェア(市場占有率)を誇るが、他社との価格競争が激しく、竹内が入社した2010年当時の売り上げはピーク時の3分の1程度に落ち込んでいた。 突っ張り棒はこれまでにコストダウンや関連商品の開発にさんざん取り組んできており、すでに社内には「やり尽くした感」が漂っていた。
自分たちで、新しい市場を開拓しなければいけない。だが、「取り付け」「取り外し」が簡単にできるという突っ張り棒ならではのカスタマイズ性を生かしたものを作りたい。 竹内が当時、暮らしていた部屋は十分な広さがあったが、寝室やリビングなどあらかじめ決められた用途に縛られているように感じていた。ライフスタイルの変化に合わせて、自由に取り付けたり、取り外したりできる収納器具があればもっと便利になるはず――。 「自分が欲しいと思うものがないなら作ろう」。新たな挑戦が始まった。
発売当初は「おしゃれすぎる」
開発段階では、これまでもっぱらコスト削減に注力していた社内から、「アイデアをどう形にしたらいいかわからない」と戸惑いの声も上がった。 それでも、デザイナーらの協力を得てアイデアを練り上げ、新商品を形にするところまでこぎ着けた。 新たな商品は、住宅建材用の木材「2×4(ツーバイフォー)材」の先端に取り付けるだけで、手軽さを売りにした。女性にも使いやすいよう、部屋の内装にもなじむようにツヤのない白や黒といった色調を採用し、パッケージデザインにもこだわった。