“クレ・サラ強要商法”若者標的 「もうかる」と誘導、スマホで完結
クレジットカードや消費者金融で借金をさせて強引に契約を結ばせて代金を振り込ませる“クレ・サラ強要商法”の被害が和歌山県内でも急増している。副業を求めて連絡してきた人に「必ずもうかる」と信じ込ませ、言葉巧みに高額な情報商材などを購入させる悪質なケースも目立っており、主に若者が狙われている。スマートフォンで完結し、短い時間で被害に遭うのも特徴だ。【松本博子】 ネットで副業サイトに個人情報を入力すると、相手から連絡があり、もうかる副業方法を教える代わりに、まとまったお金を要求される。「お金がない」と断っても、電話で言葉巧みに説得・誘導され、画面共有などで懇切丁寧な指示のもと、複数のクレジット・消費者金融会社のアプリをスマホにダウンロードさせ、ネット銀行の口座も開設させられる。借金を指定の口座に振り込んだ後は、連絡がつかない―――というのが典型例だ。 県消費生活センターによると、2021年度にわずか2件だった“クレ・サラ強要商法”の相談件数は▽22年度30件▽23年度55件▽24年度は上半期(4~9月)だけで30件と増加傾向にある。24年度上半期は相談者の60・7%を20代が占め、23年度の46・3%と比較しても若者が集中して狙われている。 多重債務者の増加が深刻な社会問題になった経緯から、貸金業法では「総量規制」があり、貸金業者から年収の3分の1を超える新たな借り入れはできない建前になっている。しかし、借金の使い道や職業、年収を偽って、短時間のうちに複数のクレジット・消費者金融会社アプリから分散して借り入れるよう指示されることもあり、事実上、借金総額の歯止めがないのが恐ろしいところだ。 同センターは「副業で隙間(すきま)時間にお金がもうかるという話が、若者に刺さるのかもしれない。電話で話してしまうと相手の巧みなペースに乗せられ、あっという間に100万円単位でお金をむしり取られる」と警戒を呼び掛けている。 県警が特殊詐欺事件として捜査している事案もある。かつらぎ署が11月9日に被害届を受理したケースでは、20代の女性が被害に遭った。スマホで副業サイトを見て連絡先などを入力したところ、会社員を名乗る男性から電話があり、副業方法を教える費用700万円を要求された。女性は複数の消費者金融アプリをダウンロードして合計362万5000円を借金して、指定口座に振り込み、紹介されたマッチングアプリのサクラの副業を続けたが、報酬が得られず、だまされたと気付いたという。 電話相談は、全国共通の消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活センターなどを案内する。県警も「ちょっと確認電話」として特殊詐欺被害防止専用フリーダイヤル(0120・508・878)を開設している。