「これって教員の仕事?」疲弊する先生のリアル 終わらない業務、保護者からの無理難題に苦慮
女性は教員になりたての20代の頃、先輩から「月給は年齢×1万円」と聞いた。 30歳なら30万円、40歳になれば40万円……。「夢あるわー!」と思ったが、行財政改革のあおりもあり、現実は違った。 ■対応しなければいけないことが増えた 授業準備や評価などの本来業務に加え、負担が重くのしかかるのは、保護者への対応だ。 保護者同士が不倫関係になり、当事者の配偶者から「うちの子を、あの子(不倫相手の子ども)と一切かかわらせるな」といった無理難題を押しつけられることもある。
約20年間に及ぶ教員生活。保護者に生活や心の余裕がなくなり、そのストレスが子どもに向けられるようになったと感じている。 虐待や、給食費未納などの対応に追われることが増えた。保護者から教員への脅しや、暴力沙汰になりかねない行為も。子どもを見放すわけにもいかず、悩ましい。 地域の人から「転んだ子がいる」といった電話がかかってくることも。「あなたが対応してあげて」という本音をのみ込み、かけつける。 苦労は絶えない一方で、女性は「仕事は楽しい」と言い切る。「子どもたちの、できなかったことができるようになった瞬間に立ち会えるのは、大きな感動がある。
怒りや悲しみも含めて、とにかく感情がすごく揺さぶられる。他の何にも代えがたい仕事だと思う」。誕生日に子どもたちがサプライズでお祝いをしてくれたことも忘れがたい。 「とにかく人手が足りない。教職は素晴らしい仕事だからこそ、もっと予算をかけて増員し、待遇も良くしてほしい。子どもたちの未来のため、です」 ■「これって教員の仕事なのか」 矛盾を感じながら、何とか踏みとどまっている教員がいる一方、教職に見切りをつけた人もいる。
関西地方の小学校に6年間勤めた30代男性は、数年前に教員を辞めた。26歳で採用され、毎年学級担任を務めた。いつもやる気にあふれ、何よりも授業に力を入れてきた。 子どもたちと向き合うことに、喜びを感じていた。勉強がわかったときのうれしそうな表情を見たとき、担当した子が卒業後に顔を出してくれたとき。 やりがいを感じる瞬間は何度もあった。子どもの学力を高めたい一心で、授業準備や教材研究を仕事だと思ったことは一度もなかった。土日も自宅でパソコンに向かった。