「たかが選手が」発言、じつは続きが…渡辺恒雄がファンに嫌われた“ナベツネなりの巨人・野球愛”「打者は三塁へ走ってはいかんのかね」
20年前、「たかが選手が」で始まったプロ野球変革
渡辺恒雄氏は、間違いなく、日本のプロ野球が変革するに際して決定的な役割を果たしていた。 それも「たった一つの言葉」で。 「分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が」 2004年、オリックス・ブルーウェーブと近鉄バファローズの「合併話」から火の手が上がった「球界再編」。実は、この年、渡辺氏はこの合併だけでなく、2リーグ12球団の体制を変革すべく大きな構想を描いていた。 まず一つが、日本ハムファイターズの東京から札幌への移転。北海道は、西武ライオンズの準フライチャイズ化を目指している段階だったゆえに西武が難色を示したが、渡辺氏は西武の堤義明オーナーに「1リーグ構想」を話して納得させたのだという。そのうえで、ロッテ、ダイエーなどが絡んだ「もう一つの合併」の構想も抱いていた。 しかし、2004年6月にオリックスと近鉄の合併が理事会で了承されると、古田敦也会長率いる労働組合・日本プロ野球選手会は、ストライキも辞さない強硬な姿勢を示した。
じつは「立派な選手もいるけどね」と
7月、古田会長は選手会を代表して「オーナーと直接、話をする機会を持ちたい」との意向を示した。しかしその話を記者から聞いた渡辺氏は「無礼な! 分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が!」と発言する。 「たかが選手が」 このたった一つの言葉が報じられたことで、世論は一気に「がんばれ古田、がんばれプロ野球選手会」という方向に傾いた。 実はこのとき渡辺氏は「たかがといっても、立派な選手もいるけどね。オーナーと対等に話をするなんて協約上根拠は1つもない」と続けたのだが、「たかが選手が」という言葉の「毒」が強すぎたゆえ、現代で言う「切り取られた」発言となったのだ。 9月に史上初のプロ野球ストライキが実施される。その後、楽天が新規参入したことでセ・パ両リーグ12球団体制は維持された。 この「球界再編」をきっかけとして、これまでの「巨人の放映権収入」に依存したプロ野球のビジネスモデルは終焉を迎え、「地域密着」「ボールパーク構想」などを基幹とする新しいビジネスモデルが誕生するに至った。なお選手会のストライキのひと月前、巨人が明治大学の一場靖弘に対して「栄養費」名目で金銭を支払っていたことが発覚し、渡辺氏はオーナーを辞任した。 渡辺氏は「たった一言」で、野球界の体制を変革させるに至ったのは間違いない。ただそれは、本人が思う方向性では全くなかったが……。
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