ああ、純度100%混じりっけなしの「門脇 麦」に終始、翻弄されまくった心地良さ!
【対談を終えて】
お話を伺う前、門脇 麦さんの撮影をした。場所は何の変哲もない、ただの路上である。 しかし彼女を中心に画を切り取ると、ただの路上に大きな一輪の花が咲いているように見えた。 途中から僕が割り込み、一緒に写った。 麦さんが訊ねた。 「取材で着る服はいつも私服ですか」 「そうです。でもジャケットのほうはいつも編集部で用意してもらっています」 「わたし、私服で来て下さいって言われると、あまり服持ってないから困るんです」 「あまり買い物しないんですか」 麦さんはかぶりを振った。 「着る服にあたまを使いたくなくて」 それから、スティーブ・ジョブズスタイルと呟いて笑った。 会議室に移動して話を聞く。 「何を演じても、やっぱり私だと思います」 「中学生の時に、今の私の年齢でも働けるんだってって衝撃を受けたんです。演技したいというより、働けるっていうのが大きかったですね」 ああ、純度100%混じりっけなしの門脇 麦! 数々の映画で観てきた通り。鋭利な知性と強すぎる信念。裏表がなく、さっぱりした感じ。だけど一筋縄ではいかない、難攻不落なシロモノ。 一度もペースを握れぬまま終始、門脇 麦劇場の中で翻弄されまくった。心地良い。 これからも天上天下唯“麦”独尊でいて下さい。 (樋口毅宏)
● 門脇 麦(かどわき・むぎ)
1992年、東京都生まれ。映画『愛の渦』(2014年)、『二重生活』(16年)、『止められるか、俺たちを』(18年)などで数々の映画賞を受賞。大河ドラマ「麒麟がくる」(20年)でヒロインを演じ、昨年はドラマ「リバーサルオーケストラ」(日本テレビ)、「ながたんと青とーいちかの料理帖ー」(WOWOW)、映画『ほつれる』で主演を努め、インバル・ピント演出の舞台『ねじまき鳥クロニクル』(村上春樹原作)で笠原メイ役を演じた。今年はドラマ「厨房のありす」(日本テレビ/日曜22:30)で自閉スペクトラム症の料理人、主人公のありすを演じ、5月28日から東京芸術劇場プレイハウスで上演される舞台『未来少年コナン』に出演中。