若い男性の8割以上が育休希望……企業は人材確保のためにも環境整備が必須
■企業が選ばれないどころか、日本からも若者が流出する懸念
小室淑恵さんは、若者が長時間労働の企業を選択しないだけでなく、日本で働くことを選択しないで、若者が海外に流出する可能性もあると危機感を示しました。 そして、「誰もが自分が休んだら職場が回らない、と苦しさを感じている。ギリギリの人数で、そうした高いストレスの中で働くと”子持ち様”というような、子持ちの人はいいよね、優遇されて。という反発が出てしまう」と述べ、「ギリギリの人員の頑張りで耐え抜く職場」から「頭数多めでお互いの急な休みは想定済み、お互い様の職場」を増やすことが必要だと強く訴えました。 そして「人手不足の中、頭数を増やすのは無理と思われるかもしれないが、意欲も能力もありながら、時間に制約があって仕事に就けていない人がいる。退職後のシニア層や色々な事情がありながらも働きたいという人材を雇うことは可能なはずだ」と話しています。
■残業させると企業が損をする仕組みが必要
さらに、日本では、残業した従業員に支払う賃金の割り増しが1.25倍である点については、駒崎さんも小室さんも、「ギリギリの人材しか雇用せずに、残業で解決する方が企業がもうかる仕組みになっている」として、労働基準法を改正し、欧米のように割り増し率を1.5倍にし、企業が従業員に残業をさせると損をするような仕組みにすべきと訴えました。
■中小企業でも長時間労働是正は可能……すると採用に困らなくなる
少ない人数で仕事を担う中小企業で、男性育休の取得率を高めることは難しいのでは、という質問に対しては、厚労省の担当者が「企業規模によって、男性育休の取得率にものすごく差があるわけではない」と述べ、「中小企業むけの国の両立支援助成金の大幅拡充のほか、育休をとった男性の代替要員を雇う場合や代替要員を雇わないが、周りの従業員が休む人の仕事を担った場合に周りの人に手当てを出す企業には、その4分の3を助成する制度などを作っている」と説明しました。 そして、小室さんは「中小企業は経営者が意識すると大体1年以内で働き方がぐっと変わるところもある。小さい企業でも男性育休の取得率が高い例もある」と述べました。 例として紹介されたサカタ製作所(新潟県)は、「1人1人の仕事の内容を見える化して共有化し、残業時間を減らした結果、男性育休の取得率も100%、平均取得期間が5か月という衝撃的な数字になっている。一番いいのは、それによって人材の採用に全く困らなくなったというんです」と述べました。 「育休中は給与を払わなくてよくて、本人への給付金は、国が払ってくれるので、会社はその浮いた金額で様々なことができるはずだと企業には知って欲しい。サカタ製作所は、残業の少ない働き方を何年も続けたことによって、恒常的に会社が支払う残業代が減り、その分を最初は賞与に入れていったが、その後は所定の賃金に入れ込んだ」と長時間労働是正が、ベースアップや採用活動にも好影響を与えた例をあげて、取り組むよう呼びかけました。