若い男性の8割以上が育休希望……企業は人材確保のためにも環境整備が必須
■何のための男性育休なのか
そして、小室さんは、男性育休がなぜ必要なのか改めて解説しました。 「産後の妻の死因の一位は自殺なんです。それも産後2週間から1か月半がピーク。この時期に大切なのはまとまった7時間睡眠や朝日を浴びての散歩などです。しかし、2時間ごとの授乳があるのでそれはできない。そして夜中に続く赤ちゃんの世話を明日仕事だという夫には頼めない。むしろ夫がちゃんと寝られるように、夫と妻子が別室で寝ることにする場合もある。すると、夫は妻が夜、どんな思いで育児をしているかわからない。一方、もし、夫が育休をとり、明日休みなら、夫も夜遅くまで起きて育児を担うことができ、産後の妻にとって睡眠などが可能になる。男性の育休は妻とこどもという2人分の命を救う大切なことだ」と述べ、背景や本質的な意義を理解してほしい、と強調しました。 そして、厚労省の追跡調査によると、第一子が生まれた時の夫の家事・育児時間が長いほど、第2子がうまれているということで、小室さんは「少子化が深刻な日本社会にとって、男性育休をさらに力強く推進していくべきだ」と述べました。
■男性育休推進には、職場全体で長時間労働をなくす必要がある
今回、育休を望む若い男性の3割が半年の育休を希望し、それを含め9割近くが2週間以上の育休を希望しているという結果をうけて、小室さんは、若い男性が望んでいるのは、数日間の「とるだけ育休」ではなく、男女がともに子育てをするための「共育て育休」であることを認識してほしいと述べました。 そしてそれを実現するには、「働き盛りの男性が数ヶ月単位で休むことが当たり前の職場を日頃から作る必要がある。育児以外にも介護など休む理由はいろいろある。誰かが休んでも回る職場が必要だ」と強調しました。 そして「これまではギリギリの人数を雇用して、休んだ人の代わりに長時間働ける人が長く働いてきた。いざとなると、残業という人海戦術で解決するので、(効率向上の)デジタル化も進まない。これからは、いかに残業をしないかだ」とし、経営者の意識を変えることが必要だと述べました。 具体的な方法の一つとして、終業から次の勤務開始まで一定の時間を確保する勤務間インターバル制度をあげました。 「2019年に努力義務になっている。一定の時間を勤務に使わないようにしていく、そうしていくと、優秀な人が深夜まで資料を作り、朝一番のプレゼンも行う……というのではなく、資料作りは後輩に任せるとか、またはプレゼンだけはほかの人が行うということになる」 「企業はさまざまなタイプの人を雇用して、短いパス回しで仕事をすることが重要になる。限られた時間の中でちゃんと仕事をするかどうかが問われるので、女性も評価され、人海戦術ではなく、デジタル投資もふえていく、こうした職場をつくることが大切だ」 「さまざまな事情の人がいて、たとえば、こどもの不登校とか不妊治療など人にいいづらい理由の場合もある。独身者も含めて常日頃から休みがとれる体制の企業に優秀な人材が集まるのではないか」と述べました。