リモートワークで「鬱」が急増!? 気づきにくいメンタル不調のサインと心に留めておきたい考え方を日本人産業医がアドバイス
人生100年時代、心の健康をキープしながらヘルシーに働くためにはどうしたらいい? 日頃から心に留めておくべき考え方のヒントや、生活に組み込みやすいティップスを、産業医の大室正志先生が伝授する。 【写真】りんごや枝豆もおすすめ!ちょっと疲れちゃった...そんな時に食べたい「元気をくれる」ヘルシー食品BEST19 教えてくれるのは・・・大室正志(MASASHI OMURO):産業医。大室産業医事務所代表。産業医科大学医学部医学科卒。現在は、大手企業、約30社でメンタルヘルス対策など健康リスクの低減に従事。社会医学系専門医・指導医。著書に『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)
リモートワークによる孤立と、SNSを通しての比較が心を不安にさせる
物理的・精神的ストレスに起因するメンタル不調。ストレスには人間関係由来も多いが、対面コミュニケーションが減ったリモートワーク時代に軽い鬱が増える理由は? 「日本はハイコンテクスト社会で、そもそも文脈や裏の意味を勝手に考える文化があるのですが、人となりがよくわからない相手とのリモートワークは、チューニングが難しく、対面より言葉が強く感じられる。オンライン上ではわからなくても質問がしづらく、生産性が下がってミスが増えたり自信をなくしたり。さらに今はおせっかいがリスクになる時代で、誘ってくれる人はこれからもっと減るので、自分から動かない人はどんどん孤立するでしょう」。 現代に欠かせないSNSの弊害も。「比較という落とし穴です。知らない人と勝手に比べて、焦り、不安になる。自分の心を守るために、私はこれでいい、という感覚をもってほしい」
ポキッと折れる鋼より、しなやかなメンタルを目指す
メンタル不調に気を付けたいのは、精神的に弱い人より、むしろ強い人だという。 「自分にも人にも厳しい"べき思考"の人。"こうあるべき"という思いが強く、まじめな完璧主義。"べき"からはみ出す人が許せず、イライラしたり混乱したり。無理を続けて、あるときポキッと折れる。仕事と育児をがんばる女性にも見られる傾向です。鋼のように屈強なメンタルは"べき思考"とつながり、ときに自分を追い込んでしまうので"まあいいか"と思えるしなやかなメンタルが理想」。 常に脳のアンテナを張り巡らせている現代社会は、ストレスと隣り合わせ。鬱のリスクは誰にもある。 「田舎の人が都会に出てくると脳に情報が入りすぎてぐったりする。それが時間とともに慣れて神経が最適化されるのが健常パターン。でも鬱っぽいと最適化がうまくいかず過剰に疲れる。鬱予備軍に、不眠の次に出るのが自律神経症状で、肩こり、頭痛、発汗、動悸など複数の不具合が。視覚や味覚が過敏になり、痛みを強く感じる傾向も」。 家族や友人に鬱症状を持つ人がいたら、どう対応すればいいのだろうか。「すぐに最適解を用意するコンサルにならないこと。カウンセラーのように支持的に寄り添い、せかさずそのままを受容して」
あなたは大丈夫? メンタルヘルスをチェックする4つの項目
1.睡眠に問題がある 寝つきが悪い、途中で起きる、眠りが浅い、熟睡感がないなどの睡眠トラブルは、メンタルが不安定になっているサイン。 2.“べき”思考が強い性格 “こうあるべき”という思いに支配されて無理をしている。人や会社にも“べき”を求め、イライラする人は注意を。 3.好きなことすらしたくない 低ストレスな休日に、好きなことすらやりたくない、疲れて何もする気が起きない、となったら危険信号。 4.画面オフが心地いい 人と対峙するのがつらくなり、対面を避けリモートに。画面をオフし顔出しをしない、マスク着用が何日も続くなら危ない。
From Harper's BAZAAR May 2024 Issue