維新代表選出馬の吉村氏 改革路線強調、待望論後押しに 全国政党化の遅れ懸念の声も
日本維新の会の代表選に吉村洋文共同代表(大阪府知事)が立候補する意向を表明した。12日の記者会見では、衆院選敗北で党が消滅しかねないとの危機感を背景に改革政党の原点に立ち返る必要性を訴えた。党内では来夏に参院選を控え、党の「顔」として期待する向きがある一方、国会議員ではない吉村氏の出馬による全国政党化の遅れを懸念する声も上がる。 【写真】「維新消滅の危機、やるしかない」 知事との兼務悩んだ吉村氏、会見で出馬の経緯を吐露 「非常に強い危機感に基づく」。吉村氏は会見冒頭で出馬決断の心境をこう述べた。危機感の裏には「国政政党としての存在意義が揺らいでいる」との思いがある。 発端は「政治とカネ」の問題だ。維新は調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革を目指し、馬場伸幸代表が当時の岸田文雄首相(自民党総裁)と合意文書を交わし、自民提出の政治資金規正法改正案の衆院採決で賛成に回った。しかし改革の結論を得る時期が自民側に共有されておらず、交渉は頓挫。党内では先の衆院選で公示前から議席を減らす要因になったと指摘される。 吉村氏は会見で、党創設者の橋下徹、松井一郎両氏の後を継ぎ代表を務めた馬場氏について「党をまとめる苦労」をねぎらいつつも、会食を通じて築いた自民議員らとの人間関係に基づく政治を「飲み食い政治」と批判。「民間では考えられない価値観、慣習をぶっ壊したい」と強調した。 これまで「共同代表として選挙結果に責任がある」と出馬の判断を留保していた吉村氏だが、会見では「(党消滅の)危機感が多くの仲間から届いた」と述べ、後押しされたことを明かした。若手議員らが、知名度が高い吉村氏の出馬を申し入れる動きもあった。 令和4年の代表選に際しては、2025年大阪・関西万博の準備などに追われる大阪府知事の職務に専念するとして、吉村氏は出馬を見送った。今回は知事と国政政党の代表をどう両立させるのかを問われ「やるしかない。2人分働けばいい」と強気の姿勢を示した。 一方、ある国会議員は維新に対し、大阪以外の有権者の関心が低いと指摘する。大阪の首長である吉村氏を中心に選挙戦が展開すれば「国政での政策実現にはほど遠いローカル政党にとどまってしまう」との懸念を示し、全国規模での政策論争の必要性を訴えた。