SECに勝訴、ステーブルコインやEVM互換サイドチェーンを発表……活発な動きの狙いは【リップルプレジデント・インタビュー】
日本市場をどう捉えているか
──XRPは「XRP アーミー」と呼ばれるファンの存在が知られ、日本でも根強い人気がある。リップルにとって、日本市場の位置づけは。 日本では、XRPL開発者コミュニティの拡大に注力している。6月には、日本と韓国のデベロッパーを支援する助成金制度として「XRPL Japan and Korea Fund(XRPL 日本・韓国ファンド)」を創設した。助成金には、すでに多くの関心が寄せられ、すでにいくつかの助成金を授与できている。 例えば、韓国のWeb3スタートアップ「Girin Labs」は、XRPLに特化したウォレット「Girin Wallet」とDeFiサービス向けのLotusプロトコルの開発に取り組んでいる。日本では暗号屋が手がけるVWBL(ビュアブル)が助成金を獲得している。VWBLは、NFTの所有者のみがデータをコンテンツを視聴できるプロトコルで、彼らは医療記録への活用を進めている。 前述したように、法人ソリューションの開拓において日本市場は重要だ。SBIグループのSBIレミットは2017年から、XRPを活用する当社の決済ソリューションを用いた国際送金サービスを展開している。XRPをブリッジ通貨として使うことで、スピーディかつ低コストな送金を実現している。 日本での開発者コミュニティの拡大を、我々は非常に楽観視している。前述したファンドがあり、SBIとの提携を通じて、我々は日本市場におけるポジションを拡大できると捉えている。 またリップルは2018年に大学でのブロックチェーン・暗号資産の研究を支援する「ユニバーシティ・ブロックチェーン・リサーチ・イニシアチブ(University Blockchain Research Initiative)」を立ち上げ、日本では東京大学や京都大学などでの研究を支援している。
ステーブルコインとXRPの役割は
──最近、ステーブルコイン「リップルUSD(RLUSD)」の発行を発表した。リップルがステーブルコインを発行することはインパクトが大きい。ステーブルコインの用途は何を想定しているか。 RLUSDの主なユースケースのひとつは、決済であり、我々は独自の決済ソリューションに、当社のステーブルコインを使用する計画を立てている。現状、決済におけるテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といったステーブルコインの利用は進み、ステーブルコインを使って、決済の効率化が進められている。我々は、リップルUSDを決済用ステーブルコインのひとつとして確立する。 さらに、XRPL上では、高品質な分散型取引所(DEX)が構築され、高品質なステーブルコインが不可欠になる。現在、XRPLを利用している開発者は、トランザクションにリップルUSDが利用可能になることでさまざまなメリットを享受できるようになるはずだ。 関連記事:リップルのステーブルコインは「数週間以内」に発行:ガーリングハウスCEO ──決済ソリューションにおけるXRPのシェアを奪うことになるのでは。 当社の決済サービスでは、流動性を確保するためにすでにXRPとステーブルコインの両方を使用している。これはサービスの裏側で行われているため、顧客は当社がそうした流動性メカニズムを処理していることを知る必要はなく、選択する必要もない。今後、そのステーブルコインにリップルUSDを活用していくことになる。 ステーブルコインとXRPは、決済や他の取引において異なるユースケースを持つと考えている。例えば、XRPL上のDEXでは、リップルUSDがきわめて効率的に取引に利用されるだろう。一方、ロングテールの、時価総額の小さな暗号資産との取引では引き続き、XRPが使われていくと考えている。 リップルUSDという高品質なステーブルコインは、XRPL、そしてXRPに多くのアクティビティを呼び込むことになるだろう。 ──準備金からの利回り収益も期待しているのか。 リップルUSDは、準備金口座で保有する米ドル、短期米国債、その他の現金同等物で裏付けられる。 それらの保有状況については、透明性を確保し、定期的に証明書を発行する。 つまり、リップルUSDには常に米ドルによる裏付けがあり、流動性が確保されていることが非常に重要になる。もちろん準備金として保有する米ドルには、利息が発生する。 現在、金融機関のパートナーとテストを行い、パートナーシップの構築に取り組んでいるところだ。 ──リップルUSDは、個人ユーザーの利用は想定していないのか。 リップルUSDの顧客は金融機関、機関投資家などになる。だが例えば、暗号資産取引所は個人投資家への流通チャネルのようなものであり、取引所を経て、個人が利用することは考えられる。しかし、我々にとって重要なことは、KYCが確立され、適切なコンプライアンスのもとで利用されることだ。 ──日本で使えるようになるか。 各国の規制当局と連携し、適切なライセンスを取得することはリップルにとって重要であり、参入する市場すべてにおいてコンプライアンスを遵守している。 2024年はじめに、当社はカストディ企業のStandard Custody and Trust Company(スタンダード・カストディ)を買収した。同社はニューヨーク州の信託ライセンスを保有しており、現在、そのライセンスをリップルに移行し、リップルUSDの申請を行うための手続きを進めている。つまり、リップルUSDが最初に登場するのは、すでにライセンスを取得している米国以外の国あるいは地域ということになる。 日本については、金融庁がステーブルコインの法規制を明確にしたことを非常にありがたく思っている。我々はそうしたルールを研究し、ルールに従っている。最初の発行に続けて、日本のような新しい市場に適切に参入する方法を評価している。