打力で劣っても… 海星、磨き上げた機動力で初戦突破 センバツ
◇センバツ第3日(20日)2回戦 ○海星(長崎)5―1社(兵庫)● ワンバウンドの暴投に素早く反応して三塁に進み、浅い左飛でも迷いなくスタートを切って生還した。一回1死二塁からの海星・田中朔太郎の足技は鮮やかだった。ただ、田中がベンチに持ち帰ったのは貴重な先取点だけではなかった。 【海星vs社を写真で振り返る】 田中は塁上で、社の先発・高橋大和の癖を見抜いていた。「相手投手の雰囲気が分かりやすくて、これは走れると気づいた」。セットポジションの時の高橋のグラブの動きで走れるか否かの見分けがつき、すぐに仲間に共有した。 その効果は早速、二回1死一塁で表れた。一塁走者の平尾幸志郎が7番・角野夢才志の打席で初球から二盗に成功。さらに、角野の右前打で一気に2点目のホームを踏んだ。平尾は3点リードの八回にも三ゴロで一塁送球する間に、三塁から生還する好走塁を見せた。 光った機動力は日々の練習のたまものだ。昨秋の公式戦のチーム打率は3割に届かなかった。昨夏の甲子園で2勝を挙げた旧チームと比べて、打力が劣ることを選手たちは理解していた。 一方で、50メートル走6秒1の平尾など足の速い選手が多く、機動力の強化に取り組んだ。新チームでは守備練習の際にもレギュラーメンバーがランナー役となり、実戦を想定した走塁練習の機会を増やした。冬場もミニハードルを用いたトレーニングで効率的な走り方を身につけ、走力向上に力を注いだ。 大舞台でもやるべきことは変わらない。「アウトになってでも走りなさい」と加藤慶二監督に背中を押された選手たちは、期待に応えるように随所で好走塁を見せ、計3盗塁も決めた。平尾は「足の速さ、機動力がチームの武器。冬の練習から意識してきたことが試合で出せて良かった」と笑顔を見せた。 海星のセンバツ最高成績は2016年、2勝してのベスト8。磨き上げた機動力で階段を駆け上がれば、新たな景色が見えてくる。【下河辺果歩】