ドゥカティ、鈴鹿8耐へワークス参戦の意向認める……野望は初の海外メーカー勝利。Team KAGAYAMAの走りが鍵に?|パオロ・チアバッティ緊急インタビュー
■ドゥカティ、鈴鹿8耐へのワークス参戦の可能性あり!
──チアバッティさん自身も、8耐へ来るのは今回が始めてですよね? PC:そうですね。全日本スーパーバイクには過去にもドゥカティのバイクが参戦していましたが、ここまでのレベルで関与はしていません。我々がプロフェッショナル集団として関わるのは、これが始めてだと思います。ドゥカティのエンジニアも、技術的にチームをサポートしています。 ──今回鈴鹿8耐にやってきたあなた自身の使命は何なんでしょうか。 PC:将来的にまたここへ来て勝つために、知見を積み重ねることです。 ──ドゥカティはMotoGPで他を圧する権勢を誇り、SBKでもBMWと熾烈な争いをしています。チアバッティさん自身は、今年からオフロードレースのマネージメント業務を担当することになりましたね。 PC:はい、そうですね。 ──ということは、ファクトリーが関わるべき次の分野は耐久レースかと……。 PC:ここ数年のMotoGPではご存じの通り、ドゥカティはもっとも戦闘力が高いバイクを作り上げて成功を収めることができました。SBKではトプラク(・ラズガットリオグル)とBMWが強力ですが、我々も依然として高い戦闘力を発揮しています。彼とBMWのコンビは容易には打ち負かせないコンビネーションですね。トプラックは本当に卓越したライダーで、カワサキに乗ってもヤマハに乗ってもBMWに乗ってもバイクの最高の性能を引き出すことができる能力の持ち主です。タフな競争相手ですよ。 でも、すべてのカテゴリーで常に勝ちまくることなど到底不可能だし、競技にとって健全なことでもありません。いつの日か勝ってやろうと思うことは、いいモチベーションにもなりますよね。 モトクロスについては、我々にとって新たなチャレンジです。今年は開発を兼ねてイタリア選手権に参戦しており、いまのところとても満足できる内容になっています。引退していたトニ・カイローリが復帰して優勝を達成し、別のレースでは2位に入ってくれました。もうひとりのライダーも大雨の後の難しいマディコンディションでレースをリードして、いい走りを見せてくれました。我々は来年、MXGP(モトクロス世界選手権)に参戦する予定です。私自身にとっても、企業にとっても、これは大きな挑戦になるでしょうね。ドゥカティとしては、来年半ば頃に若いファンがモトクロスコースの走行を楽しめるような量産車を販売できれば、彼らがさらに成長してドゥカティファミリーに定着してもらうチャンスにもなるでしょう。 ──ダカールラリーには興味はないのですか? PC:今のところはないですね。個人的は面白いと思っていて、今年のダカールも1月に数日見に行きましたが、ホンダやKTM、HEROのレベルはとても高いことがよくわかりました。だから、現状ではまずモトクロスの450ccに注力し、250ccの力もつけてからアメリカのスーパークロスに参戦することを考えています。それが現状の優先順位です。そこで納得のいく成功を収めることができれば、ダカールやラリーを考えるかもしれませんが、今はまだその段階ではありません。 ──ダカールといえば数年前に、ダニーロ・ペトルッチ選手が参戦して話題になりましたよね。 PC:ああ、そうですね。ダニーロは面白いライダーで、常に新たな挑戦を探し求めているんです。MotoGPではKTMへ移り、KTMにダカールへ参戦させてほしいと打診したようですね。おそらくただ楽しむために走りたいんだろう、と皆は思っていたのですが、あのとおりのタフガイですから、いい走りをしてスペシャルステージでは勝ちましたよね。すごいことだと思います。とはいえ、ダカールというレースは企業にとって非常に大きな挑戦です。しっかりとした組織づくりをし、ロジスティクスにも大いに気を配らなければなりません。なので、繰り返しますがダカールは今のところ我々の計画には入っていません。 ──では、ドゥカティとしてEWCや鈴鹿8耐に参戦することは、可能性としてありえるでしょうか。 PC:8耐については、イエスですね。我々がユキオのチームと協業しているのは8耐に参戦して経験を重ね、再びブリヂストンとの関係を築くという目的があるからです。8耐を考えると、彼らのサポートは非常に重要ですから。 ブリヂストンのサポートでたくさんのことを学べて、本当に感謝をしています。先ほども申しましたが、我々の将来的な計画はボローニャからファクトリーバイクとMotoGPライダーたちを投入し、ユキオのチームとともに戦うことです。イタリアからのロジスティクスは大変なので、今と同じチームであったとしても、ユキオたちが持っているロジスティクスを活用し、規模はさらに大きくなるでしょう。 ──そういえば、過去にバニャイヤ選手が「いつか8耐に参戦したい」と言ったことがありましたね。リップサービスだったのかもしれませんが、ドゥカティでドリームチームを結成して参戦することは将来的にあり得るでしょうか。たとえば、バニャイヤ、マルク・マルケス、アルバロ・バウティスタといった選手のラインナップで……。 PC:マルクやバウティスタについてはわかりませんが、ドゥカティのMotoGPライダーたちで参戦したいとは考えています。ペコとファビオ・ディ・ジャンアントニオは鈴鹿8耐に参戦したいと言っているので、MotoGPやSBKからやる気のあるライダーを第三ライダーとして探したいところですね。それが来年になるのか、あるいは2026年なのかは、時期尚早なので今はまだなんともいえませんが、明日の決勝レースを見て、データや様々な情報をボローニャに持ち帰り、そのうえで今後の計画をしっかりと見極めたいと思います。 ──ぜひ、ごく近い将来に実現してほしいと思います。 PC:私も同感ですよ。 ──では、明日の健闘を祈っています。 PC:アリガトーゴザイマス。がんばりますよ。
西村章