60代以降も雇われたままで良いのか? 老後の不安を解消する「働き方の選択肢」
動けば何かが変わる
「定年ひとり起業」で成功するには、他との差別化も重要です。昔取った杵柄だけではやがて食えなくなります。これに関して、リクルート出身の藤原和博さんは、異なる「3つの専門性」を組み合わせる「クレジットの三角形理論」を提唱しています。 一つの専門性を持つ人はだいたい100人に1人。二つの専門性を組み合わせると100分の1×100分の1=1万分の1ですが、これでもまだ足りません。その二つとはかけ離れた分野で異なる専門性を獲得すれば、100分の1×100分の1×100分の1=100万分の1の希少性を持つ、オンリーワンな存在になれる、というのです。 実際、藤原氏は、リクルートで獲得した「プレゼン・営業力」と「リクルート流マネジメント」という二つの専門性に、民間初の公募による公立中学校の校長を務めた「教育改革実践」という専門性を加えて、まさにオンリーワンの存在になっています。 私も、この藤原氏の理論を参考に実践してきました。現在は、「財務スキル」×「ビジネス書の多読・実践」×「多彩な発信力」という3つの専門性によって、他にはないポジションを獲得していると自負しています。 長年会社員をしてきた人なら、「人生とキャリアの棚卸し」で、一つ二つの専門性が見つかることが多いと思います。そこにぜひ付け加えてもらいたいのがICTです。私の場合は、51歳でX(旧Twitter)を始め、55歳でFacebookとブログ、61歳でYouTubeチャンネルを始めました。そして64歳ではstand.fmで、音声コンテンツの配信も開始しています。 三つ目の専門性として、時代の進化に合わせた情報発信のスキルを付け加えることで、どんな状況でも生き残っていける希少性と発信力を身につけることができるのです。 スタンフォード大学で教授を務めたジョン・D・クランボルツのプランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)理論によれば、キャリアの8割は偶然によって引き起こされると共に、その偶然は自ら作り出すことができる、と言います。行動するからこそ、思わぬ出会いやチャンスがやってくるのです。より充実した定年後を実現するためにも、今ここから動き始めることをお勧めします。
大杉潤(研修講師)