完投にこだわってきたロッテ・種市篤暉が完投勝利!昨季0完投に「悔しいです。悔しい」。侍Jでは完全リレーの最後を締め「シーズンでも完投してハイタッチしたい」
◆ 4年ぶりの完投勝利 「疲れていますけど、気持ちいい疲れだと思います」。 戦いを終え、ヒーローインタビューに応えるロッテ・種市篤暉の姿は充実しているように見えた。22日の西武戦、9回・102球を投げ、4被安打、8奪三振、1与四球、1失点の好投で20年7月25日の西武戦以来、自身4年ぶりとなる完投勝利で今季3勝目を手にした。 立ち上がりからストライク先行の投球で、打者32人中26人に対して初球ストライク。イニング別の投球数を見ても、1回(9球)、4回(9球)、8回(9球)、9回(7球)は10球以内で終え、15球以上要したイニングも失点した6回(21球)のみ。ピンチらしいピンチも6回以外はなく、危なげないピッチングだった。 その中でも光ったのがストレート。右打者、左打者にインコースをガンガン攻め、2-1の6回一死満塁で中村剛也に対して初球151キロのインコースストレートで空振り、2球目の152キロストレートでファウルを奪い、2ストライクと追い込むと、2ボール2ストライクから5球目に空振り三振を仕留めた153キロのストレートもインコースだった。 ストレートもこの日は最速153キロを計測し、150キロ以上は36球。今季初登板となった3月30日の日本ハム戦は150キロ超えが38球あったが、5月15日のオリックス戦は8回を投げ150キロ超えは16球と、ここ最近は140キロ台後半のストレートで打ち取ることが多かった中で、150キロを超えるストレートが多かった。 2-1の9回、最後の打者となった蛭間拓哉を1ストライクからセンターフライに打ち取ったストレートも151キロだった。試合が終了すると、キャッチャーの佐藤都志也とグータッチをし、マウンドに集まってきたナインとハイタッチ。この瞬間を種市は何よりも望んでいた。 遡ること2カ月前。3月7日に京セラドームで開催された「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024日本vs欧州代表」。7回が終了した時点で欧州代表をパーフェクトに抑えていた侍ジャパンの投手陣。2-0の8回に侍ジャパンの一員としてマウンドに上がった種市も、2回を完全投球で、完全試合リレーの最後を締めた。 「最後みんなでハイタッチできて嬉しかったです。シーズンでも完投してハイタッチしたいと思います」と話していた中で、嬉しいチームメイトとのハイタッチとなった。 ◆ 誰よりもこだわってきた完投勝利 種市は完投に関して誰よりもこだわってきた。 完封、完投勝利を目標にした中で右肘のトミー・ジョン手術から一軍本格復帰した昨季は0だった。昨季終了後の取材で「悔しいですね。悔しいです。完投数を増やしたいです。先発ピッチャーとしての目標ですよね」と悔しさをにじませていた。 完投数を増やすために課題の1つとなっていたのが球数。特に昨季は初回に球数を要すことが多かった。そこについて種市は昨年11月9日の取材で「単純に技術不足かなと思います。コントロールないし。そこをどうつけていくかと僕は思っているので」と話していたが、今季初回15球以上要した登板は3登板のみ。その他の登板では15球以内にまとめている。 また、種市がプロ入りから課題にしていたのが、試合途中に足がつってしまうこと。一軍に定着した19年5月16日のオリックス戦では6回2失点で3勝目を手にしたが、「自分はすごい足がつりやすい。この前の試合はちょっと…。つりかけたっす」(2019年5月19日の取材)と、足がつりやすかった。 「どうやって(足が)つらないようにするか、ストレッチもたくさんしたり、あれとって、これとって、いっぱい試していました。(昨年の)序盤も(足がつっているのを)見せないようにしていましたけど、毎試合つっていたので。4回、5回とかにつるパターンが多かった。どうしたらいいですかと栄養士に聞いていろいろ試しました。それで素晴らしいものを見つけてしまったという感じです」と昨年のシーズン中盤にその問題も解消。 今年長いイニングを投げられている要因の一つに足がつらなくなったことも要因なのだろうかーー。 「そうですね、それもありますし、栄養士とも相談しながら、栄養の勉強もしながら、自分で試しながらできているのが一番良いかなと思います。つらなくなりました」。 試合途中に足をつる不安もなくなり、5月15日のオリックス戦では8回・122球を投げ、22日の西武戦は9回・102球で完投勝利。 5月は3試合・24イニングを投げ、2勝0敗、22奪三振、防御率0.00。防御率、投球回数、奪三振は月間トップの成績を残す。5月の月間成績は素晴らしいが、種市の持っているポテンシャル、現状に満足することなく新人時代から変わらず高い向上心を持っていることを考えれば、ここが最高到達点ではなく、さらに進化していくはずだ。進化していく姿、ワクワクする投球、種市はいいぞ!と思えるようなピッチングを続けてほしい。 取材・文=岩下雄太
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