「膵臓がん」に抗がん剤が効きにくいのは“コラーゲン”が原因!? 新薬開発の希望となる研究結果
膵臓がんとは?
編集部: 今回の研究で取り上げられた、膵臓がんについて教えてください。 中路先生: 多くの場合、膵臓がんは膵管に発生します。膵臓がんはサイズが小さいうちからリンパ節や肝臓などに転移しやすいのが特徴で、腹膜播種が起こる恐れもあります。 膵臓にできる腫瘍は、膵管内乳頭粘液性腫瘍、神経内分泌腫瘍などもあります。日本で膵臓がんと診断された人は2019年時点で4万3865人おり、5年生存率は約1割です。 切除できる場合の膵臓がんの治療は、手術や薬物療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を実施します。切除できない場合は、主薬物療法や放射線治療を組み合わせた治療をおこないます。がんのステージによっては緩和ケアのみをおこなう場合もあります。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 岡山大学らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 中路先生: 線維化は膵臓がんの特徴であり、腫瘍内への薬物の到達を妨げます。本研究の特記すべき点は、独自の立体培養技術を用いて、膵がんの線維化障壁が形成されるメカニズムを解析したことです。 また、ROCK1ではなくROCK2 をターゲットにした方が効果的であったことから、現在進行中の他疾患のROCK2をターゲットとした既存薬剤を用いて膵がんの線維化障壁克服の効果がある可能性も示唆しています。 このことは、新薬開発に関わる時間・コストを削減できる可能性も秘めており、画期的な研究結果であると言えるでしょう。
まとめ
岡山大学らの研究グループは、膵臓がんに抗がん剤が効きにくい原因が、がん細胞を取り巻くように蓄積する大量のコラーゲンであると発表しました。 膵臓がんの難治化の原因を明らかにし、克服することは極めて重要な社会的課題とされているだけに、今回の発見は注目を集めそうです。
【この記事の監修医師】 中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
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