千代建、米LNG事業追加費用で赤字転落-自己資本急減49億円に
みずほ証券の伊藤辰彦アナリストらは25日付のリポートで、同日発表された内容に関する「印象はニュートラル」とした上で、直近の株価下落によって24年3月期損失見通しの影響はおおむね織り込まれていたと考えられるとした。ただ、「自己資本比率はかなり低い水準にとどまると考えられ、本件および他の案件で追加費用が生じた場合、債務超過に陥る可能性が高い」とも指摘した。
千代建は25日の発表で、ザクリのプロジェクトからの離脱の可能性に伴う今後のプロジェクト完工に向けて必要と見込まれる十分な費用を見積もったとした。また、現時点で約1000億円程度の手元現預金を持っており、業務運営に支障はないという。
千代建によると、ザクリの離脱後に顧客と残りの合弁相手企業と速やかに短期的な遂行計画や完工までの長期的な計画に合意することとなっている。顧客との契約交渉の進展を図るとともに、24年7-9月期以降に合意内容を踏まえ採算の見直しを実施し、自己資本の回復を目指すとした。
太田社長は、今回引き当てた370億円はプロジェクトのコスト超過分を顧客が一切負担してくれないという保守的な前提に基づいており、同費用については「基本的には全額取り戻すつもりで交渉していく」と述べた。資金繰りには問題ないこともあり、前回の経営危機時に支援した三菱商事などから再び財務支援を受ける考えは現時点でないと明言した。
千代建の米子会社などのJVは19年、カタール国営石油会社のカタールエナジーと米エクソンモービルのJVが進めるゴールデンパスプロジェクトの設計、調達、建設業務を受注したと発表。千代建によると、契約当初の為替レート換算でプロジェクト総額は約1兆円とされていた。
太田社長は、現時点で想定されるプロジェクトのコストは合弁相手企業が計算している最中なため具体的な金額については言及を控えるとした。チャプター11を申請したザクリが担当していた工事の大部分については再開許可が裁判所から出ておらず、プロジェクトの工期は遅れる見通しであるとし、今後顧客といつまでの完工を目指すか協議を進めていくと述べた。