またトランプ暗殺未遂、必要なら装甲車も持ち出す要人警護の壮絶な現場
もともと予定にはなかったゴルフなのに、容疑者はなぜそこで待っていたのか。常に不確定要素がつきまとう仕事でありながら絶対の結果を求められるシークレットサービス
ドナルド・トランプ前大統領が9月15日、フロリダ州ウェストパームビーチにある自身のゴルフクラブを訪れたのは「非公式」の行動だった。米大統領警護隊(シークレットサービス)のロナルド・ロウ長官代行はそう語った。 【動画】シークレットサービスの極秘本部に潜入、その施設と装備は この週末、フロリダ州南部の「トランプ・インターナショナル・ゴルフクラブ」でゴルフをしていたトランプに対する暗殺未遂とみられる事件と関連して、ライアン・ラウス容疑者(58歳)が身柄を拘束された。これは、2024年の米大統領選において、トランプを狙った2度目の暗殺未遂事件となる。前回は7月13日、ペンシルベニア州バトラーで開かれたトランプの集会で発生し、銃撃を受けた同氏は右耳上部を負傷した。 今回の事件で負傷者は報告されておらず、米連邦捜査局(FBI)の指揮で捜査が進められている。 法執行当局によると、15日にシークレットサービスの警護官1名が、前大統領から500ヤード(約457m)と離れていない茂みに沿ったフェンスから、容疑者がライフルの銃身を突き出しているのに気づいて発砲。後方にいた警護官たちがトランプをカバーし、ラウス容疑者は車で逃走。その後、近くの郡で身柄を拘束された。
もともと予定にはなかった
ロウ長官代行は16日午後の記者会見で、トランプが15日にゴルフ場を訪問したのは、予定表にはない行動だった、と記者団に説明した。 「昨日は、シークレットサービスの警備手法が効果を発揮した」とロウは述べた。ロウは、7月13日にバトラーで1度目のトランプ暗殺未遂事件があったときにシークレットサービスが批判を受け、キンバリー・チートル前長官が辞任した後に長官代行に就任した人物だ。 ロウは記者団に対し、前大統領が「もともと(ゴルフ場に)行く予定ではなかった」ため、「事前の人員配備」はトランプがゴルフをすると決めてから行ったと述べた。シークレットサービスはトランプがゴルフをするあいだ、前方のホールの「安全確認」を行なうなど、「重層的なアプローチ」をとっていた、とロウは強調した。 「おかげで、木立の中にいた容疑者を発見できた」とロウは16日の会見で述べ、「捜査官は、前方で安全確認をして危険を発見するという自分の仕事をした」 現段階では、トランプがゴルフ場にいることをラウス容疑者が知っていたかどうか、あるいはどのようにして知ったかについての情報は得られていない、とロウは付け加えた。 AP通信によると、シークレットサービスの捜査官やその他の法執行機関は、トランプが頻繁に楽しんでいるゴルフをプレーする際、ゴルフカートや四輪バギーに乗って、数ホール前方および後方のエリアを警備していることが多いという。トランプがただちに身を隠す必要がある場合に備えて、装甲車両をコースに持ち込むこともあるという。 ロウは、今夏に発生したトランプ暗殺未遂事件を踏まえ、「前例のない、変化の激しい脅威環境に対応している」と、シークレットサービスの捜査官たちを繰り返し称賛した。加えて、バトラーでの集会後、ジョー・バイデン大統領がシークレットサービスへの支援強化に取り組んでいることを強調した。バイデンと、11月の大統領選にトランプの対抗馬として出馬するカマラ・ハリス副大統領は、15日の事件を受けて即座に、政治的暴力を非難している。 (翻訳:ガリレオ)
ケイトリン・ルイス