オタクアナウンサー吉田尚記と振り返るアニメミュージック隆盛の15年 人気の根底にある魅力とLIVEイベントの醍醐味とは
アニメに寄り添うタイアップ、時代変化にあるユニゾンの功績
――その後の2000年代中頃からの10年間、アニメのトレンドに適応しながらアニメミュージックが隆盛してきたと思いますが、大きな変化を挙げるとするなら何があるでしょうか。 一般アーティストの方々がアニメについて何も知らずに作曲していた人も存在していた時代から、アニメの内容を把握して曲を作ることが絶対的な要素になったのがこの頃です。その例として、2010年ころの「UNISON SQUARE GARDEN」(以下、ユニゾン)の成功があると思います。 ――その頃はまだ「オリオンをなぞる」(TVアニメ『TIGER & BUNNY』主題歌・2011年)をリリースしているかいないかの頃ですかね。 そうですね。実は僕、2008年頃から田淵智也さん(Ba.)と知り合っていたんですよ。当時、まだ一般に知られるヒット曲をリリースできていなかったのですが、純粋に曲がとても好きで「君たちはすごい!」と言って、自分の番組に呼び続けて、何度も飲みに行ったりしていました。 するとある日、田淵さんから「実は俺、アニオタなんです」と打ち明けられたのですが、え?と驚いたと同時に、初めて「どうりで自分の好みに合ってたのか…」と辻褄があったことに気づきました。その後、「TIGER & BUNNY」で主題歌タイアップが決まり、アニメとともに大ヒットした…という。 この頃、「一般アーティストはこれぐらいやらなければならない」という基準が自然に生まれたんじゃないかな、と感じましたね。 ――オープニングはアニメを見てると必ず見るものですからね。 やっぱりアニメの一期のオープニングはとても大切だと思うんです。この出来が良いか悪いかでアニメ自体の生き死にに関わるほど、強い影響を与えていると思うので、安易なタイアップが減少し、アニメミュージック全体の変化としても色濃く現れていると思います。 ――2010年前後ってアニメミュージックにとってかなり大切な時代だったんですね。 今思い返せば2000年代の10年間で、以降10年の“マスターピース”が生まれ、思想性が整理された頃だったなと感じます。「ハレ晴レユカイ」や「もってけ!セーラーふく」、それこそ「けいおん!」もそうですが、どんな人が聞いても「いい歌だね」となるラインナップが揃ったのが2010年前後。ここまで来て初めて、アニメミュージックシーンというものが本当の意味で生まれていたのではと思います。 その影響もあって、リスアニ!や「ANIMAX MUSIX」といった、現在に至るアニメミュージックイベントの礎もこの頃に生まれ、「アニソンでこの規模はおかしくないよね」「アニソンは楽しいな」という状況が出来上がったんじゃないですかね。