“炎上”や“損害賠償請求”の可能性も…「SNSに他者が映った写真・動画を投稿したい」→後のトラブルから守ってくれる「肖像権使用同意書」とは?【弁護士が解説】
誰かの写真を無断でSNSでの投稿やホームページ、印刷物などに利用すると、肖像権侵害になってしまいます。肖像権をめぐったトラブルは企業イメージの悪化につながるほか、損害賠償請求の対象になってしまう恐れもあって……。本記事では、肖像権をめぐるトラブルを避けるために有効な「肖像権使用同意書」について、Authense法律事務所の弁護士が詳しく解説します。 都道府県「電気代値上がり率」ランキング…家計調査「2022年12月」前年同月比較
「肖像権」とは?
肖像権とは、簡単にいえば、容貌や容姿を承諾なく撮影されたり公開されたりしない権利です。肖像権は日本国憲法13条の「幸福追求権」をベースとして判例で確立された権利であり、法令に明文の規定はありません。 自身の写真や動画を突然撮影されて、承諾なく公開されるなどすれば、安心して生活することは困難です。また、撮影された場所や状況によっては、公開されることで不利益を被ることもあるでしょう。そこで確立されたのが肖像権です。
「肖像権使用同意書」とは?
肖像権使用同意書とは、写真や動画の被写体となった者から、肖像権の使用について同意を得る書面です。他者が写った画像や動画をホームページなどで無断に公開すると、肖像権侵害に該当し、損害賠償請求などの対象となる可能性があります。 また、厳密には肖像権侵害とまではいえない場合であったとしても、公開を望まなかった被写体から削除を求められ、トラブルとなったり企業イメージが低下したりするおそれもあるでしょう。 そのため、他者が写った写真や動画を公開する場合には、あらかじめ肖像権同意書を取り付けることをおすすめします。肖像権使用同意書を得ることで、その者が公開に同意したことが明白となり、思わぬトラブルや損害賠償請求を避けやすくなります。 なお、撮影の同意を得たからといって、肖像権の使用同意を得たことにはなりません。撮影の同意を得ていても公開の許可を得ていない場合、無断で公開すれば肖像権侵害となり得るため注意が必要です。
肖像権使用同意書の取得が必要となる主な場面
肖像権使用同意書は、どのような場面で取り付ける必要があるのでしょうか? ここでは、肖像権使用同意書を取り付けておくべき主な場面を3つ紹介します。ここで紹介するのは一例です。ほかにも他者の肖像を公開しようとする場合には、あらかじめ肖像権使用同意書を取得しておくことをおすすめします。 他者をインタビューした動画をYouTubeやXなどのSNSにアップロードする場合 YouTubeなどでは、しばしば街中などで他者をインタビューする動画の投稿が見受けられます。このように、他者をインタビューした動画をYouTubeやX(旧:Twitter)などのSNSに投稿する場合は、肖像権使用同意書を取り付けておくべきでしょう。 この場合の肖像権使用同意書は、その場で書面を手渡して記載してもらう方法がもっともスムーズであると思います。 撮影した生徒の写真を行事案内や学校ホームページに掲載する場合 学校や保育園などの行事の際に撮影した写真を園や学校のホームページに掲載したり、地域の広報誌や学校案内などの紙面に掲載したりすることがあります。このようなことを行おうとする際は、肖像権使用同意書を取り付けておくと安心です。近年、子どもの顔写真が公開されることを避けたいと考える保護者も少なからず存在するためです。 この場合の肖像権使用同意書は行事ごとに得るのではなく、入園(入学)時に保護者からまとめて取り付けておくとスムーズでしょう。また、書面ではなくスマートフォンアプリなどのシステム上で同意を得る方法もあります。 会社のホームページに従業員の写真を掲載する場合 自社のホームページやパンフレットに、従業員の写真を掲載する場合があるでしょう。業種によっては、スタッフの顔が見えることで顧客の安心感につながります。この場合も、「自社の従業員だから」といって口頭だけで合意を得るのではなく、肖像権使用同意書を取得することをおすすめします。なぜなら、特にその従業員が退職した際に、掲載に関してトラブルが生じるおそれがあるためです。 退職した従業員の顔写真はいずれ削除するとしても、会社としてはすでに刷ったパンフレットが残っているうちはそのパンフレットを使用したいといった事情や、従業員が退職する都度ホームページを改訂するのではなく、1年に1回程度まとめて修正をしたいなどの事情もあるでしょう。 そのような事情を踏まえて肖像権使用同意書を取り付けておくことで、トラブルの予防が可能となります。このようなケースでは、入社時にまとめて同意を得る方法のほか、ホームページ用の写真撮影時に個別に同意を得る方法などが考えられます。