なでしこJの藤野あおばが直面した4カ月の試練。「何もかもが逆境だった」状況からの脱却
昨年8月に日テレ・東京ヴェルディベレーザから3年契約でマンチェスター・シティに加入した藤野あおばは、今季、女子スーパーリーグ開幕戦とチャンピオンズリーグのグループステージで先発。女子スーパーリーグのブレイク候補生4位に名を連ねるなど、注目を集めた。だが、加入からの4カ月間について、藤野は「何もかもが逆境だった」と振り返る。想像をしのぐハイレベルな環境で、逆境に晒された藤野は、いかにして「勝負できるポイント」を見つけたのか? インタビューを通して、そのステップアップを支える「努力する才能」が垣間見えてきた。 (インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=ロイター・アフロ)
世界最高峰のクラブで受ける刺激
――今季、マンチェスター・シティは女子スーパーリーグとチャンピオンズリーグを並行して戦い、藤野選手は2024年11月3日のクリスタル・パレス戦からすべての公式戦で先発し、同17日のチェルシー戦以降はフル出場しています。連戦の中で、どのようにコンディションや気持ちを整えながら戦っているのですか? 藤野:短いスパンで試合が続いているので、体の疲れが少し残ってしまうこともありますが、試合に出ていろいろなことを実践できる機会があるのはすごくうれしいことで、充実した日々を送っています。 ――2024年8月にチームに加入してから4カ月が経ちました。シティはボール保持やビルドアップにおいて、日テレ・東京ヴェルディベレーザと共通点も多いと思いますが、どんなことが刺激になっていますか? 藤野:スーパーリーグの中では、シティはボールを保持している時間が長く、長いボールを蹴ってくる相手に対しても後方からつないで攻撃しますし、フリーな選手を生かすために、どうパスを供給していくかという部分は、ガレス・テイラー監督が求める部分です。その点はベレーザに似ていますが、アタッキングサードに入った時にスピードのギアがもう一段階上がるところや、ゴールに向かっていく全体的な推進力は、WEリーグよりもさらに強度が高く、刺激を受けています。 ――周りの選手のスピードが上がると、競う中で自分のスピードも上がるような感覚はあるのでしょうか? 藤野:みんな速すぎるので、それはあまり感じないですね(笑)。そもそも、スピードでは勝負できないなと感じます。ただ、アジリティの練習などでスプリントをした時に、切り返し動作が入ると、タイムロスが少ないので勝負できると感じます。そういう俊敏性や、ボールを奪われた後の切り替えの速さは通用する部分だと思うので、そこを生かしてチームに還元できればいいなと思っています。 ――移籍の際には、語学習得へのモチベーションも口にしていましたが、言葉の壁はどのように乗り越えているのですか? 藤野:やっぱり英語は難しいです(苦笑)。ただ、監督やチームメートは、ジェスチャーを交えたり、ゆっくり話してくれたり、分かりやすい言葉を使ってくれたりするのでなんとか理解できます。対面で話す分にはなんとなく慣れてきたのですが、不意に声をかけられた時とか、ミーティングで全員に向かって話す時のスピード感や単語は理解できないことも多いので、(長谷川)唯さんに聞きながら確認しています。