フェラーリのカリスマ、ルカ・ディ・モンテゼーモロが成し遂げたこと 【第8回】フェラーリのブランディング戦略
エンツォの哲学を直接受け継ぐ存在
そして、モンテゼーモロもまた、ブランディングの達人であった。自分たちだけしか作れないものをひたすら作り続け、それを自分のコトバで語る。理路整然とした素晴らしくロジカルであり、あるときはひたすらエモーショナルに…。フェラーリには至るところに、エンツォ、そしてモンテゼーモロをはじめとするその作り手の顔が見える。 モンテゼーモロにはアニエッリ・ファミリーとの強いシナジーがあることから、イタリアのビジネスマンのアイコンたる比類なきブランドパワーを備えているのは大きな強みだ。 さらに彼はエンツォ・フェラーリの円熟期においても、身近な存在として彼をサポートしたという実績がある。アニエッリ家に限りなく近く、ブランドの創始者であるエンツォ・フェラーリの寵愛を受け、彼の哲学を直接受け継いでいるという望外なカリスマ性を持っている。モンテゼーモロの発する台詞の裏には2人の歴史的カリスマの重みを感じるのだ。 時代とともに経営者の顔とその方針が変わっていったブランドとは異なり、フェラーリはエンツォのフィロソフィーと、そこから生まれた我が道を行く姿勢が変わることはなかった。 モンテゼーモロはエンツォのイメージを延命させることが出来た重要な存在であった。1988年にこの世を去ったエンツォであるが、なぜか今もマラネッロで元気に部下を叱りつけているような錯覚を残している。だから古くからのフォロワーは安心してエンツォの亡霊に心酔し続けることができたのだろう。 続きは2024年6月8日(土)公開予定の「【第9回】株式上場を目論むマルキオンネとの確執」にて。
越湖信一(執筆/撮影) 上野和秀(編集)