【バレー】イタリア女子が男女史上初の五輪金メダルに寄せて 名将ヴェラスコの来歴と手腕 パリ五輪
アメリカとの決勝で3-0での優勝を決めた瞬間、確執のあった2人、エゴヌとアントロポアが長い間抱きしめ合っていたシーンは、ヴェラスコ監督のチーム作りが本当に上手くいった事を証明していた。表彰式では、旧キャプテンのシッラと現キャプテンのダネージがお互いのメダルを首に掛け合っていたシーンが見られ、厳しい時期を過ごしたディジェンナーロ、ボセッティの目には涙が浮かんでいた。
MVP&ベストOP エゴヌ、ベストセッター オーロ、ベストOH シッラ、ベストリベロ ディジェンナーロ、ベストミドル ダネージ チームスポーツの頂点に立つには、技術以外にも「人間関係を重視したチーム作り」が大切な事を証明した快挙だった。もうイタリアのマスコミが「足りない金メダル」という話題を出す事もなくなりそうだ。 金メダル獲得後のヴェラスコ監督、今後を問われると、「私は新しい事に挑戦したくて女子の監督に立候補した。なぜなら今まで女子の監督をした事がなかったからだ。女子を指導するという事で、新しい事を習い自分自身が成長したかったからだ。何か新しい事に挑戦しなくなったら、後は老化現象が加速するだけ、、、(苦笑)スポーツ市場最高の結果金メダルを持って引退というのが良いという意見もあるが、自分はできるだけ老化現象を止めたいと思っている」と言及した。72歳にして自分自身の成長のために新しい刺激を求める姿勢に感銘である。 そしてスペシャルなチームという記者の問いかけに、「私たちは決してスペシャルなチームではない、他の国と同じレベルのチームだ。スペシャルなチームではなく、ただ単に勝利者、このトーナメントは自分達が勝利チームという位置づけが正しい。今回は自分達が対戦相手よりも良いプレーをする事ができた。ただそれだけだ。イタリア女子チームは数年前にもヨーロッパ選手権、VNLで優勝しているし世界選手権は2位だ。だからイタリア女子チームが弱かった訳ではない。勝てば全てが良くて、少し負けると全てが駄目だという考え方はやめた方が良い。確かにこのチームは、クオリティーを変える事ができた。それはテクニックや戦略に基づいたものだ。メンタリティーやグループの団結力それはもちろん大事だが、それは勝ってこそフォーカスされるもので、負ければそれらは全く意味が無いものと扱われる。今回は私達が勝ったけど、次の試合からは今私達が成し遂げた事はゼロになる。オリンピックで勝利したからといって、天狗にならずに、ゼロから始める気持ちでほかのチームと同じレベルなのだから勝つためにはまた毎日のトレーニングに励まなければならない。オリンピックで勝利したからと言ってそれで終わりではなく、常にもっと上手くなるために努力し続けなければならない。今回は勝ったけれども、次は負ける事だっていくらでも可能だからだ」 と金メダル獲得後も「UMILE」(謙虚)である事を忘れてはならないというヴェラスコ監督にイタリア中からの賞賛の声が、今後も引く手あまたで周りがまだまだ引退はさせてくれなさそうだ。 2024年8月 イタリアの各新聞、インタビューより 編集部注:ヴェラスコはかつて男子日本代表の監督公募に応募したことがある。このとき日本代表監督は実現せず、イラン代表監督となってイランが強化されることとなった。 写真:volleyballworld Special Thanks to Yuriko (Italy) 出典:エミリアトラベル