2ヵ月でドル円は20円も下落。円高・株安はまだまだ続くのか?
■この円高はトク? ソン? 「ところが、今年の5月から7月にかけて、実質金利差とドル円レートの動きが逆方向になりました。金利差は縮小に向かっているのに、円安は止まらなかったのです。これはヘッジファンドなどの投機筋が円をむやみやたらと売り続けていたためだといわれています」 この時期、金融市場では「キャリートレード」と呼ばれる取引が流行していた。これは低金利の円を借り入れて高金利のドルに替えて運用し、金利差を利益として得る取引で、最終的には借りた円を返済して利益を確定することになる。 このとき、ドル円が円高に振れていると返済する円の額面が大きくなるため、金利差で得た利益が目減りしてしまう点がポイントだ。 「7月から8月にかけて、日銀の利上げや米国の景気悪化の兆候などが立て続けに起こり、投機筋は5月から始まっていた金利差縮小をいよいよ無視できなくなりました。そこでキャリートレード解消の売買が殺到し、円高が進行したのです」 そして9月18日には米FRBが0.5%の利下げを発表し、さらに日米の金利差は縮まった。こうして、為替市場はあるべき状態に戻ったというのがカツキ氏の見解だ。となると、ここから先は落ち着いた展開になると考えていい? 「基本的には、年内は135~150円台程度の幅に収まると考えています。米国の景気が堅調なので10年国債の金利がそれほど下がらず、金利差が大きく動くこともないと考えられるからです」 大事なのはやはり金利差。裏を返せば、米国の景気悪化による利下げや、日銀の利上げが想定外に進めば再度の円高もありえるわけだ。 ところで、株式市場の「令和のブラックマンデー」についてはどう見る? 「日経平均下落の最大の要因はやはり円高です。日本の株式市場は円安で業績が伸びる企業が多く、海外投資家もそう見ているのです。要は『円安・株高』と『円高・株安』が基本線で、3月に起きた『円安・株安』はイレギュラーというわけですね。 さて、図表②は円換算した米国株(S&P500)と日経平均を描いたものですが、なんとほぼ同じ動きになっています。つまり日本の株価は、米国株の動きにドル円レートの動きをかけ合わせたものでほぼ説明できてしまうのです」
日本株が再び上昇気流に乗るには、円安か米国株の上昇が必須だとカツキ氏は強調する。この点では、米国景気が堅調なのは今後の日本株にも前向きな材料と考えてよいだろう。 「現状の140円前後のドル円レートが続くと仮定すると、数年前に比べれば十分に円安。引き続き海外からの投資呼び込みやインバウンドにはプラスで、日本経済の成長に寄与すると思います」 直近の円高進行は、物価高の緩和という点ではわれわれの生活にとってプラスに働く可能性もある。現状の「程よい円安」と、広まりつつある賃金上昇が定着すれば、この先の未来は意外と悪くないかも? 取材・文/日野秀規 写真/時事通信社