科学で証明「寝不足だと食欲が増す」は本当だった 専門家が明かす、睡眠と太りやすさの深い関係
そして、徹夜したあとに睡眠をとって睡眠不足が解消されると、血糖値とインスリンはリバウンドのように大きく増加します。これは、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)による成長ホルモン分泌増加が原因と考えられています。 ■血糖値を上昇させるのは成長ホルモン 成長ホルモンは、筋細胞や脂肪細胞がブドウ糖を取り込むのを減少させ、肝臓から血液へのグルコース放出を促進させます。 したがって、成長ホルモンによって血糖値は上昇することになります。深いノンレム睡眠は成長ホルモン分泌を促すので、この血糖上昇作用が強まるということになります。
睡眠中に血糖が上がるのは、インスリンの血糖を下げるはたらきが、睡眠前半では鈍っている影響もあります。 睡眠時間の中間時刻で血糖値は最大ピークを示し、睡眠後半にかけては、インスリンの血糖値を下げるはたらきが回復し始め、血糖値は朝にかけて減少していきます。 このように睡眠の前半と後半では、血糖値の動きは大きく異なります。どうしてか、答えを考えてみましょう。ヒントは、睡眠の前半は、深いノンレム睡眠が多く出現することです。
■睡眠中に血糖値が上がる犯人は「脳」 人体で、いちばんブドウ糖を消費している臓器は何でしょうか? そう、脳です。脳はどの臓器よりも多くのエネルギーを消費していて、1日に消費するエネルギーの20%弱を占めています。 睡眠の前半の深いノンレム睡眠、すなわち徐波睡眠では、脳のブドウ糖代謝が覚醒時と比較して30~40%と、著しく低下します20。脳がブドウ糖を消費しなくなるぶん、血糖も余ってしまい、血糖値が高くなるのです。
また、徐波睡眠では、成長ホルモンの分泌も活発になります。成長ホルモンの分泌もまた、血糖値を高くします。 さらに、睡眠中に分泌が活発になるホルモンであるメラトニンですが、夜間のメラトニン分泌の増加が、睡眠中の血糖値を下がりにくくしている可能性があるようです21。 レム睡眠が優勢になる明け方の睡眠の終わりには、血糖値とインスリン分泌は睡眠前の値に戻ります。レム睡眠では、ノンレム睡眠のときよりも脳のグルコース代謝も活発になり、また交換神経の活性化によって体の代謝が活発になるため、ブドウ糖消費が増えるためと考えられています。