イギリスと日本でこんなに違う「アフタヌーンティー」。伝統に忠実、家族で楽しめる工夫も
“ヌン活”という言葉が誕生するほど、日本でも人気が定着しているアフタヌーンティー。19世紀にイギリスで誕生した食習慣で、上流階級の社交行事として夕食前の夕方に紅茶とともに軽食や菓子を楽しむものでした。今では世界各国でアレンジが加わり、そのスタイルにも広がりが見られるように。ここでは、食文化研究家のスギアカツキさんが、イギリスと日本のアフタヌーンティーの違いについて語ります。 【写真】子ども用アフタヌーンティーも本格的
イギリスのアフタヌーンティーの多くは「伝統に忠実」
コロナ禍前の2019年以来、4年ぶりの渡英。今回はロンドンを中心に、コッツウォルズ地方やケンブリッジなどの郊外にも足を運び、レストランやホテル、スーパーマーケット、イギリス家庭の食卓の様子などを広く見て回りました。 なかでも力を入れてリサーチしたのが、アフタヌーンティー。日本のホテルやカフェなどで提供されているものとの違いを、大きく3つに分けて紹介します。アフタヌーンティーについての基本知識に触れるきっかけにしていただけたらうれしく思います。 まず1つめの違いは、ケーキスタンドの中身。日本のアフタヌーンティーでは、さまざまなコンセプトに基づく独創的なアレンジを施したケースが多いのに対し、イギリスのアフタヌーンティーの多くは、伝統的なスタイルに忠実であることに気がつきます。 本場のアフタヌーンティーの基本構成は、サンドウィッチ、スコーン、ペストリー(ケーキ)の3種。サンドウィッチはキュウリやスモークサーモンなどシンプルな食材が使われていて、その味はどれも濃厚。 スコーンもバターミルクを使用して焼き上げられており別格のおいしさで、日本で同じレベルの味に出合うことはなかなかありません。私個人としては、日本のアフタヌーンティーの魅力はアレンジ力、イギリスは本格的な味わいにあると感じました。
風味の強い紅茶に合う、濃厚な味わいのケーキが絶品
2つめの違いは、ケーキを食べたときの濃厚さや香り。渡英経験のある方は想像しやすいかもしれませんが、イギリスで飲む紅茶は日本とはまったく違い、風味の力強さが魅力。それに負けないケーキが提供されるのです。 たとえばベリー類やマンゴー、チョコレートにも洋酒を効かせるなど、ひとつひとつの存在感がはっきりしています。これは一概に甘さという概念だけでくくられることではありません(海外のケーキは甘いと言われがちですが、そうではないケースも多いです)。薄力粉が主流である日本のケーキは繊細で軽やか、さっぱりとした食べ心地が魅力。イギリスに行くと、濃厚なケーキをおいしい紅茶とともに堪能することができます。