桜の名所・御殿山で生まれた「日本のカクテル」 東京マリオットホテル
連載《hotel TIPS》Vol.18
編集長がホテルのおいしいものや楽しみを探しに行く「hotel TIPS」。今回紹介するのは、日本人の心の風景に関わる1品です。民間調査では2024年のインバウンド(訪日外国人)客数が前年比38%増の3450万人になる見通し。ホテルに宿泊する多くの外国人は、バーやレストランで日本ならではのメニューを所望します。そんなニーズのど真ん中を打ち抜くカクテルがあると聞いて、東京マリオットホテル(東京・品川)の「ラウンジ&ダイニング G」に向かいました。 【もっと見る】美しいピンク色、バーテンダーの手さばき…1分動画と写真でチェック バーテンダーは何を語る?
■桜の香り 2種類をブレンド
ホテルは御殿山という地名でも呼ばれる高台にあります。15世紀の武将、太田道灌が江戸城を築き、入城する前に居住していた場所といわれ、江戸時代は歴代将軍の鷹狩りの休息所になっていました。もともと自然豊かな土地で、江戸時代には桜の名所として広く知られました。今なお桜の季節になると、あたり一面がうっすらとソメイヨシノのピンク色に染まります。 その咲き乱れる桜のイメージをシグネチャーカクテルにしたいと2021年に考案されたのが「Sakura マティーニ」です。 桜の葉や花の香味が持ち味のジャパニーズクラフトジンに桜のリキュールをプラス。徳島県産の高級砂糖、和三盆とレモン果汁を入れてシェークします。ふんわりとした和三盆のやさしい甘みが加わることで、マティーニが繊細で柔らかな味わいになります。 クラフトジンとリキュールという異なるアルコールの桜の香りが奏でるコク深い風味は、食前酒にうってつけで、あるいは「ラウンジ&ダイニング G」が得意とするグリル料理との相性もピッタリです。
■期間限定で好評 レギュラーに「昇格」
「このホテルは非常に外国人のお客様が多く、特にコロナ禍の後は日本のエッセンスを実感したい、というリクエストが相次ぎ寄せられています」とバーテンダーの石井孝政さん。「当初、このカクテルは桜の時期限定でお出ししていたのですが、ご好評をいただいたことから、通年で提供するようにしました」 石井さんは以前、個店のバーに勤務していましたが、今は豊かな自然に抱かれる東京マリオットホテルで、由緒ある歴史を感じながらシェーカーを振るのが楽しくて仕方がないといいます。 ホテルのロビーに位置するこのラウンジは日中、17メートルもの吹き抜けの大きな窓から太陽光が降り注ぎます。一面に桜が咲く季節は和の情緒があふれ、抜群の華やかさを誇ります。そして日が落ちれば一転、ムーディーな雰囲気に包まれるのです。グラスに沈めたマラスキーノチェリーによって、カクテルのうっすらしたピンクは次第に色を濃くしていきます。夏の夜にもぴったりのカクテルといえるでしょう。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。