もうすぐ42歳でも…痛感した「サッカーって難しい」 元代表MFの尽きぬサッカー熱【コラム】
イジられキャラは変わらず、吉田麻也は「今ちゃんがひたすらいじられる」
タテへの意識に目覚めた今野が、今回の2つの引退試合で中村憲剛と遠藤保仁(G大阪コーチ)という名手と久しぶりにピッチに立ったのだから、刺激は大きかったはず。特に風間監督体制の川崎をけん引していた中村憲剛のスーパーな球出しには目を見張るものがあったようだ。 「今回、憲剛さんとヤットさんと一緒にやってみて、やっぱり別格だなと思った。メチャメチャ刺激を受けました。実は憲剛さんは1回、南葛の練習に来てくれたんですけど、その時もプレーの1つ1つが凄かった。ホントに違うなとしみじみ感じました。自分もそれを求められているのは間違いない。ああいうプレーをスタンダードに毎試合やることを求められているし、そうしないとレギュラーにはなれないから。来年も大卒の若くていい選手が沢山入ってくるだろうし、その中で競争しなくちゃいけない。バチバチやって、勝っていきたいです」 今野は間もなく42歳になるが、彼は年齢に関係なく常に純粋な気持ちでサッカーを追い求めている。そのピュアなところが今野の大きな魅力でもある。久しぶりに会った吉田麻也(LAギャラクシー)が「今ちゃんがひたすらいじられるんで『懐かしいな、この空気感』というのはありました」と笑っていたが、その真っ直ぐさ、ひたむきさがあるが故に、彼は多くの人々に愛され続けているのだ。 ある意味で「サッカーの申し子」とも言えるこの男には、この先も長くピッチに立ち続けてほしいところ。同じタイミングで南葛入りした稲本潤一が今季限りでの現役引退を発表し、1つ年下の長谷部誠(日本代表コーチ)や4つ下の岡崎慎司(バサラ・マインツ監督)らも半年前にユニフォームを脱ぐなど、同じ時代を戦った面々が次々と去っていく傍らで、今野の「もっともっとうまくなりたい」という向上心は衰えを知らない。 「こういう引退試合に来ると、『俺も迫ってきてるな……』とは感じますよ。でも、現状維持だともう先はないという感じかな。少しずつでも成長しないと、この世界では生き残っていけない。それだけ厳しい世界だなと感じます。だから、来年も自分の成長、チームの勝利を考えてやっていきたい。40代になって特別に取り組んでいることはあるわけじゃないけど、やっぱりいいトレーニングを100%やっていくこと。それを続けていくだけですね」と、彼は新たな決意を口にする。 JFLに昇格するためには、関東リーグ1部で優勝するか、全国社会人サッカー大会で上位に入って、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)に駒を進め、ここで勝たないといけない。このハードルの高さはJFLからJ3昇格とは比較にならないほどの狭すぎる門。地域CLのハードな連戦など課題も多く、制度改革の必要性を訴える声も少なくないが、現状ではこれを勝ち上がるしか、上のカテゴリーには辿り着けない。4シーズン目を迎える今野がそのけん引役になってくれれば理想的。どこまでも高みを目指して走り続けてほしいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa