妙に安いと思ったら……名義変更もできなきゃ保険も入れない「金融車」! 絶対に手を出してはいけないクルマの正体とは?
■「金融車」が怪しくなるのはここから
上記のように正式な手続きを踏めば「金融車」はまっとうに売買されて“普通の”中古車になります。 しかし、オーナーが借金で首がまわらない人の場合はその例に当てはまらないケースがあるようです。 ローンは返せないけどクルマは乗り続けたい……という状況を考えてみましょう。 起こすアクションは「さらに別のところから借金してローンを(とりあえず)返済する」というパターンが想定できます。 それが続くと“別のところ”への借金が増え続けて、気がついたときにはもう車両を売却しても返済にはとても追い付かない状況になっています。 最終的には“別のところ”のいいなりで車両が差し押さえられてしまいます。ここでいう“別のところ”というのは、多くの場合「ナニワ金融道」に出てくるようなジャンルの会社なので、非合法な手段も行いながら車両をコロがして多くのお金を得ようとするでしょう。 その過程でグレーな業者に流れていった車両が怪しい「金融車」というわけです。
■所有者が認めなければ名義変更ができない
その怪しい「金融車」の最大のポイントは「所有者」がローン会社のままという部分です。 自分で名義変更手続きを行ったことがある人なら知っていると思いますが、車両の登録には「所有者」と「使用者」という2つの名義を記す必要があります。 所有者=使う人ならどちらの項目にもオーナーの名義が入りますが、たとえば会社だったりの場合は所有者は会社で、使用者は従業員の名前になるでしょう。 これがローンで購入した場合、所有者の欄はローン会社の名義になります。つまり所有の権利はオーナーにはない状態です。この状態で名義変更するには、所有者であるローン会社の承認が必要です。 上記の怪しい「金融車」の場合はどうでしょう? “別のところ”は所有者に無断で車両を転がしているので、当然ですが名義変更はできません。車両には必ず所有者の名義がローン会社の車検証が付属します。 普通に考えればそんな車両は中古車市場に出まわっても買い手が付かないと思いますが、そこはグレーな世界。グレーな手段でチョロまかして売り抜くケースがあるようなんです。 そんな怪しい「金融車」を購入してしまったオーナーは災難です。法的に所有権はローン会社から移っておらず、その後に売買をおこなった業者たちは無断で違法な売買をおこなっていることになりますので、ローン会社が訴訟でも起こせば出るところに出なくてはならないでしょう。 ただし、そうと知らずに購入したオーナーは非を問われないことがほとんどだそうです。 とはいえ、怪しい「金融車」の多くは相場よりも安く価格設定されていることが多く、それに疑問をもたずに購入するのは不自然という見方もできますので、必ずしも無罪放免とは行かないでしょう。 そして、非を問われないまでも車両の権利の主張が通るとは限らないので、結果として少なくない勉強代を払うことになる可能性もあるでしょう。
■今どきはグレーなリスクは侵さない?
実際、昭和の時代はそういった怪しい「金融車」が多く出まわっていたというウワサもちょくちょく聞こえてきましたが、今ではグレーな業者も余計なリスクを冒さない傾向にあるそうなのので、ムチャな方法で中古車として売却するのではなく、バラして部品として売却したり、海外に流すなどの名義の変更が必要ない方法で処分しているという話も聞きます。 いずれにしても、まともな生活で生涯を終えたいと考えている人は、クルマの購入時にグレーな臭いを嗅ぎ取れるようにアンテナをしっかり張って近寄らないようにしましょう。
往 機人