身近な異変も。2024年の気候変動にまつわる印象的なニュース12選
11月:富士山、130年前の観測開始から最も遅い冠雪
11月に入っても、富士山に雪が積もらない――そんな報道を聞いて、驚いた人も多かったはず。今年、富士山に初冠雪が観測さたのは、平年の10月2日から1カ月以上経った11月7日のこと。気象台によれば、これは観測を始めてから130年のあいだで最も遅い冠雪だったという。 冠雪が遅れる主な理由として、やはり考えられているのが地球温暖化による気温上昇。『ネイチャー』に掲載された論文によれば、人為的な温暖化が原因となって、1981年から2020年までの間に北半球の積雪量が減少したことが報告されている。 事実、富士山の年平均気温はここ100年あまりで1.2度上昇しており、さらに気象台は、2024年10月の富士山の山頂付近の平均気温は平年に比べて3度ほど高く、1.6度だったと発表している。気温が高く推移するなか、雪が降っても溶けてしまい、積雪量が減少し冠雪までには至らなかったと考えられる。 また、それ以外に富士山特有の気候性や局所的な天候が影響している可能性も。もともと、孤立した富士山の地形は湿った空気がぶつかって起きる地形性降水(雪や雨)を引き起こしやすい。富士山に特化したじゅうぶんなデータはないものの、これが温暖化によって、雪より雨となって現れる確率が増えていることも考えられる。 こうした自然現象にはさまざまな要因が絡んでいるもの。けれど、ある程度人為的な気候変動が関わっていることは否定できなくなってきている。
11月:「気候変動はでっちあげ」主張のトランプ氏が米大統領選で勝利
11月5日(現地時間)に投票が行われたアメリカ大統領選で、共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利したのはご存じのとおり。4年ぶりに大統領のポストに返り咲くことが決定した。 これまで気候変動は「でっちあげ」であると何度も主張してきたトランプ氏。ハリケーン「ヘレーネ」がフロリダ州を襲った直後の9月30日に行われた集会でも、「環境問題は最大の詐欺」だと発言し、物議を醸していた。米国連邦緊急事態管理庁長官は、「へレーネ」による被害は気候変動と関連していると述べている。 こうした考えを貫いてきたトランプ氏が当選したことにより、危ぶまれるのが世界の気候変動対策。事実、トランプ氏は、今世紀末までに地球の気温上昇を1.5℃度までに止めることを目標とした国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する方針を示している。また、バイデン政権が進めてきた火力発電炭素排出規則や、乗用車やトラックを対象とした排ガス規制などの撤回が進むとみられているほか、化石燃料については「どんどん掘れ」という方針のもと、採掘から生産・輸出まで積極的に後押ししていくとも考えられている。 もちろん、パリ協定から抜けたあとも、ある程度国際的な気候変動対策の取り組みに縛られることになるのではないかとみる声もある。また、『BBC』によればバイデン政権が導入したインフレ削減法(IRA)は、グリーンエネルギー関連への莫大な投資を行い、共和党の地盤にも大きな恩恵をもたらしているという。このことから、トランプ政権によってグリーンエネルギーへの移行が妨げられることはないと希望的な見方をする人もいるよう。 いずれにせよ、アメリカは経済的にも政治的にも世界に影響力のある国。今後の動向に注目していきたい。