未来は誰のもの?
歴史的な名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、そして先ごろ話題になったドラマ『不適切にもほどがある』。これらのタイムワープものの作品に必ず登場するのが、タイムパラドックスという概念です。未来から過去に行き、過去の事実に影響を与えて変化させてしまうと、その先の未来が変わってしまう。これがタイムパラドックスです。 このことが教えてくれるのは、未来は過去の様々な判断が積み重なって出現しているということ。つまり、その判断が変われば、まったく異なる未来が出現するということです。これは私たち自身の人生に置き換えても同じことです。私たちのその場その場の判断が、未来を決めているのです。これはいうなれば、「未来は『今ここ』で創っている」ということです。
「今は大丈夫」なのか?
「温暖化の臨界点」という刺激的なタイトルで、そのテレビの特集番組は始まりました(※1)。地球温暖化がテーマです。 北極海の氷は太陽光を反射し、気温上昇を抑える効果があります。しかし、この氷が解けると、直接海水や地面が太陽光を受けることになり、それは更なる気温上昇につながるといいます。このまま気温上昇が続くと、氷が解けるプロセス自体を止められなくなり、温暖化を止めるのが難しくなるという内容です。 関連して、英国のBBCニュースは次のように伝えています。 「世界の平均気温が観測史上初めて、年平均で工業発達以前に比べて1.5度以上、上昇していたことが欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)の研究で明らかになった。 世界各国は2015年にパリ協定を採択し、気候変動による深刻な影響を回避するため、世界の平均気温の上昇を工業発達以前に比べて1.5度以内に抑えようとしている。1年にわたる目標超過は、パリ協定を破ったことにはならない。しかし、世界の気温が長期的に目標を超過し続ける状況に近づきつつあることを示している」(※2) この地球温暖化の議論は、世界中で長らく続けられています。では、なぜ止められないのか? 特集の中で解説者はこう言いました。 「私たちがその影響をすぐに受けないから、議論をしない」 その影響をより受けるのは、未来世代であるから。満開の桜が観られなくなるのも、美味しいお鮨が食べられなくなるのも自分たちではないから。 「今は大丈夫」 しかし、この問題の本質は、 「氷が解けるプロセス自体を止められなくなる」というところにあるのではないでしょうか。そう考えると、決して「『今』も大丈夫ではない」ということです。 地球温暖化というテーマに限らず、同じようなことが私たちの身の回りで日々起きています。 「今すぐ問題が起こるわけではないので、この案件が終わってからにしよう」 「今は期末で忙しいから、少し時間が経ってからにしよう」 「着任して間もないから、まだよくわからない。もう少しわかってからにしよう」 「私の任期もあと一年だから、先のことを考えてもしょうがない。次の人に任せよう」 わかってはいるけれど、今でなくても大丈夫。さまざまな理由で自分を正当化し、先送り、後回しにする。 組織の中で、こうした先送りや後回しが、日々たくさん生産されているのではないでしょうか? しかしそれは、「変化する未来」に対して、あまりにも無責任で無自覚な在り方ではないでしょうか? 氷が解けるプロセスが止められなくなるのと同じように、何かのプロセスを止められなくなる可能性はないでしょうか?