NHK大河ドラマ『光る君へ』と朝ドラ『虎に翼』は、いまなぜインディペンデントウーマンを描いているのか?
NHK大河ドラマ『光る君へ』と朝ドラ『虎に翼』は、いまなぜインディペンデントウーマンを描いているのか? 社会的影響力を持つ2大ドラマ、NHKの大河ドラマと朝ドラの主人公2人に、自分達の人生を重ねてみたら見えてくることを分析! 2大ドラマ『光る君へ』と『虎に翼』の主人公の最大の共通点は?
幅広い世代が観ることでそれなりの社会的影響力を持つドラマといえば、NHKの大河ドラマと、朝ドラこと「連続テレビ小説」だろう。その2大ドラマが、時を同じくして圧倒的なまでのインディペンデントウーマンを描いていることは興味深い。そして今、これまた時を同じくして、2作品の主人公たちは人生の新たなステージへと足を踏み入れていっている。 振り返ると彼女たちのこれまでの人生ステージは、“自分の人生を生きる”か“女としての人生を生きる”かの選択のステージにあったとも言える。愛する人と共にいることで自立を失うか、それが嫌なら別れか……という。どちらも本当に好きな相手だけに、まさに究極の選択だ。 しかしこの選択の苦悩は、必ずしも平安や昭和という“昔”に限ったことではない。女性が“すべてを手に入れるための術”を多く得た今も、数少なくない女性たちがやはり同じような選択を突きつけられ続けている気がする。そこで2人の主人公に完全に自分たちを重ねながら、あらためてこの2大インディペンデントウーマンドラマを振り返ってみたいと思う。
自分の人生をやりきりたい
朝ドラ『虎に翼』には、主人公の夫による「僕の望みは、寅ちゃんが後悔せず自分の人生をやりきってくれること」という名ゼリフがあったが、好評を博している2大ドラマ『光る君へ』と『虎に翼』の主人公の最大の共通点は、共に「自分の人生をやりきりたい」という張り裂けそうなほどの渇望を抱いていることだろう。 『虎に翼』の寅子(伊藤沙莉)は、結婚して家庭に入ることが女の幸せ、という時代に、その価値観に疑問を抱いて育った女性。そんなとき「法律」というものに出会い、大学の女子部に進学して法律を学び始める。女性ゆえぶつかるさまざまな壁を跳ね返し、見事日本初の女性弁護士となった寅子だったが、結婚して子供を授かったとき、男性社会と戦い続けることに疲れ果て弁護士を辞める決断をするのだ。 そこから戦争を経て、大切な人を多く失い、寅子はあらためて“自分の人生をやりきる”想いを新たにする。6月からスタートした第2ステージでは、この“やり切る”初段階が描かれると思われるが、この選択にたどり着くまでに、寅子は2つの大きな選択を迫られている。1つは、大学の同級生で後に裁判官となる花岡(岩田剛典)との恋だ。家柄もよく結婚相手として申し分ない花岡だったが、裁判官は転勤の多い仕事。単身赴任なんて価値観のないこの時代、花岡と結婚することは、寅子にとって仕事を諦め彼についていく、ということを意味する。だから花岡がもろに出してきていた「結婚したい」サインも寅子はスルーしまくる。結果、花岡は別の女性との結婚を選んで大ショックを受ける、ということになるのだが、これは寅子が無意識のうちにおこなった選択だったと思う。 さらに寅子は、この時代は結婚していない女性は社会でまともに扱ってもらえない、と感じたことから、「誰でもいい」と、かつて書生として自分の家に居候していた佐田優三(仲野太賀)と結婚する。しかし優三の優しさに触れた寅子は、彼に恋をし、やがて子供を身ごもる。ここで初めて男性に守られることの安心感、愛する人たちと穏やかに暮らすことの幸せを知った寅子は、初めて女の幸せのほうに“流され”てしまう。が、当然ながらずーっとモヤモヤ……。そして夫を失ったことで、あらためて自分が本当にやりたいことは何かを考え、そのための新たな一歩を踏み出していく、というわけだ。