なぜ、あの企業が選ばれ、利益を上げているのか? 企業成長の鍵を握る「戦略物流思考」―― 優良企業は物流で利益を追求する
「物流」を部分最適するだけでは限界がある
物流をプロフィットセンターとして機能させるためには、物流を「物流思考」と「戦略物流思考」という概念でとらえる必要があります。「物流思考と戦略物流思考のどちらが重要か」と考えるのはナンセンスで、物流思考に戦略物流思考も加えて考えることが重要です。 物流思考は、物流とは作業であり、コストセンターであるという一般的な考え方です。つまり、「物流を生産性でとらえて、物流業務を行なう思考」といえます。 物流思考において、物流は生産性を上げてコストダウンをしようとします。コストダウンを図る方法としては、物流の個別単価を下げることです。たとえば、ピック作業のムダをなくす、梱包工程を自動化する、運搬距離を短くするなどの「部分最適」の積み上げです。 物流には、図のように「輸配送、保管、包装、荷役、流通加工、情報処理」といった6つの機能があります。 部分最適とは、これら各機能の最適化を企業が図ることをいいます。このように物流思考は以前からある思考ですが、現在では物流思考だけでは、企業間競争に勝てなくなっています。 たとえば、経営トップや経営幹部がコストダウンの命令ばかりだと、物流担当者は、相見積もりをとったり下請け業者に掛け合ったりして何とかコストダウンを実現しようとします。現場でもコストが少しでも下がるように、各機能の工程を減らそうといった発想になります。 しかし、こうした発想では大きな改革はできず、現場は常に仕事に追われモチベーションが低くなり、さらなるコストダウンは難しくなります。そこで、物流思考に加えて「戦略物流思考」の必要性が高まっているのです。
物流を企業戦略から全体最適する「戦略物流」
戦略物流思考は、「物流を戦略としてとらえ、企業戦略に合う物流戦略を組み立てる考え方」です。物流をプロフィットセンターとしてとらえ、物流コストをかけることで、商品単価を上げたり、販売量を増やしたりして売上向上につなげます。 具体的には、多くの一般的な企業では、店舗を作ってから、コストや納品スピードに問題が出てきて物流拠点を作ります。しかし、米国のウォルマートや、日本のセブン-イレブンは物流拠点を作ってから店舗を作ります。こうした発想は、物流思考だけでは不可能です。コストを考えると、物流センターを先に作ることはありえないからです。 そこに、戦略物流8大機能が必要となります。前述の物流6大機能に「管理」と「調整」の機能を追加したのが、戦略物流8大機能です。 管理とは: 物流6大機能全体を管理します。管理することにより物流コストを計算して増減を把握し、理由を探求することでコストダウン、コントロールをしていきます。6大機能を見渡すことにより、倉庫は倉庫だけ、運送は運送だけといった相見積もりレベルでの業者変更にならないように倉庫拠点を持とうとか、配送方法を変えようといった発想につながります。 調整とは: 物流に関わる部門の間をとりもって、調整する機能です。たとえば、製造部門がまとめて生産するのがコストが安いので受注生産にしたいと思っていても、営業部門にとっては、生産に時間がかかることで競合に顧客が行く可能性が生まれるので、受注生産は避けたいと思うでしょう。これを自社の戦略に沿ってどうすべきか、製造部門と営業部門の間を調整します。