Googleストリートビューに「映り込んじゃった人」が明かすGoogle社員の意外な証言
現在ではどちらも丸見えだが、それまでは何らかの「見られては困るもの」が写っていたのだろうか。 これに対して北朝鮮国内は以前からかなりの解像度で閲覧できた。『日本鉄道旅行地図帳 朝鮮台湾』の仕事で戦前の朝鮮半島の鉄道路線を調べていた私には大助かりである。社会主義国では地図や航空写真について規制の厳しい国が多いが、この国ではグーグルも営業活動をしないだろうから、自由に衛星画像を貼り付けたのだろう。 各地をよく見れば、指導者の命令によって山の頂上まで耕地にした後、洪水ですべてが泥に埋まった生々しい光景や、旧式のミグ戦闘機がおそらく燃料もなく放置されているのが手に取るようにわかる。こんな画像はひと昔前ならアメリカの国防総省関係者ぐらいしか見られなかっただろうに、今や日本の小学生がスマホで閲覧できるようになった。 ● ストリートビューの撮影年を選べる理由 ヒントは東日本大震災の被災地の声 グーグルマップの航空写真モードを最も拡大すると、視点が上空から地上に降りて「ストリートビュー」が始まるが、これが登場した時は本当に驚いたものである。行ったこともない世界中の通りを、歩行者の視点で自室に居ながらにして眺められるのだから。そもそもこんな大それたプロジェクトを考え出す発想は尋常でない。
プライバシー保護のため表札や顔におおむねボカシは入っているものの、戸建ての家は全部丸見えで、門構えから庭に置かれた自転車やプランターなどなど、詳細がすべて撮影されている。ある時、自宅2階のベランダにいたらすぐ下をグーグルカーが通り過ぎた。その後ストリートビューを閲覧した際、目のあたりにボカシの入ったTシャツ姿の怪しい男がアップされていたのは言うまでもない。 あまり知られていないが、日本ではすでに撮影が何巡目かに入っており、左上の「ストリートビュー○月○年」とある部分をクリックすると撮影年を選べる。ちなみに拙宅は2010年2月、14年4月、15年5月、17年6月、18年6月、19年5月、21年10月、23年1月と8回も撮影された。最近になって家が新築された近所の土地も、日付を遡ればそこが畑だった頃を眺めることができる。 これは実際にグーグルの社員の方にお聞きしたことだが、ヒントは東日本大震災の被災地の声だったという。津波で流される前の商店街の様子をボランティアが印刷して地元の人たちに配ったところ好評で、何年かおきに撮影した画像をすべて閲覧可能にした。
最近では街並みの変化を調べるためにこれを活用する研究者や学生も増えているという。この先さらに50年、100年と続けば、まったく前例のない貴重な「街並みアーカイブ」になることだろう。 世界中のストリートビューが見られるものだから、ついこれから行く旅行先を覗いてみたくなるのも人情だが、これをやってしまうと楽しみが減るから、私はつとめて自制しているつもりだ。 ちなみに国防上の理由と思われる社会主義諸国やプライバシーを尊重するドイツやオーストリアなどでは見られないので、これらの地域は誰もが「行ってのお楽しみ」である。
今尾恵介