デヴィッド・ギルモアが語る『狂気』以来の最高傑作、ピンク・フロイドの永遠に続きうる確執
ピンク・フロイドについて今思うこと
ピンク・フロイドについて今思うこと ―EPKの中で、本作は『狂気(Dark Side of the Moon)』以来の自分の最高傑作だと語っていますね。そう感じるのは何故でしょうか。 ギルモア:軽々しい発言だよね、まったく。というか『狂気』は僕のお気に入りの作品ですらない。『炎~あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)』の方が好きな気がするね。ともあれ、僕の思い出せる限り、僕の作ってきた作品の中でも最高傑作な気がしているんだ。と言うのも大昔の作品の中には、他人の作品のような気がしてしまうものもあるからね。ロジャーが僕たちの小さなポップ・ブループを脱退したとき、僕は30代だった。今は78歳だ。 ―人生1回分くらいの年月が経った気がするのでは。 ギルモア:今の僕にはあまりに関連がない感じがするよ。 ―ツアーの準備はどのくらい進んでいますか。 ギルモア:バンドは準備してある。アルバムに参加したミュージシャンが大半で、彼らが新しいバンドの一部になっているんだ。(ベーシストの)ガイ・プラットも勿論新しいバンドにいるよ。それから僕が2015~16年に行ったツアーの後半に参加していた、(キーボード奏者の)グレッグ・フィリンゲインズもいる。でも今回僕以外のシンガー2人は、レナード・コーエンと長くツアーを共にしていたチャーリーとハッティのウェッブ姉妹なんだ。イングランド出身の女の子たちで、実は家もそんなに遠くない。それからロマニーも説得して参加させることができた。いくつかのショウでリード・ボーカルを執るんだ。あの子はロンドンで大学生をやっているから、全日程に参加できるかどうかはわからないけどね。 ―あなたは今年の初め、今度のツアーで「70年代のピンク・フロイドを紐解くのは気が進まない」と発言していました。70年代のフロイドはなし、というのが今もあなたのマインドセットなのでしょうか。 ギルモア:たまには現実に目を覚まさないといけないときがあるよね。その時代からは多分1、2曲やることになるんじゃないかな。ただ、あまりに昔の気がするんだ。みんなが大好きなのはわかっているし、プレイするのも大好きだ。「あなたがここにいてほしい」をやるかって? もちろんやるさ。それから、どのみち僕と一緒にスタートした他の曲もね。 ―あなたがソロ・ギグで「コンフォタブリー・ナム」をプレイしなかったことはありません。あの曲はセットリストに入るでしょうか? ギルモア:そうだね、かなり可能性が高い。可能性大だね。 ―「生命の息吹き(Breathe)」「タイム」「マネー」などはいかがでしょう? ギルモア:「マネー」はやらない気がするね。あれ目当てで来られても……。 ―新作は全曲演奏するのですか。 ギルモア:1つにまとめてではないけどね。まだちゃんと取り組んでいないんだ。リハーサルも始まっていないからね。セットリストやショウの進行に関しては取り組み始めたけど、まだ固まっていない。 ―あなたは今年の初め、最後のバンドがピンク・フロイドのトリビュート・バンドみたいな気がし始めていたと発言していました。どうしてそのように思ったのでしょうか。 ギルモア:前回のツアーの途中で1、2人メンツを入れ替えたんだ。と言うのも今までより重荷を感じるようになっていたから、彼らにもっと背負ってほしいと考えたんだ。僕はきつい仕事をしている人たちの上で、空気のクッションに乗って漂っているような感じになりたかった。そうすれば歌と演奏に集中できるからね。それから、オリジナル盤にあまり猿真似のように固執しないように。みんなに少しだけ多く自由を感じてもらって、音楽を活き活きとさせたかったんだ。 とてもトリッキーなことではあるけどね。ショウを観に来る人たちは、レコードに収録されているのとまったく同じ音を望むものだから。ミュージシャンたちはそういうものから離れたいんだ。僕も離れたい。ちょっとしたジャグリングのようなものだよ。重要なものにはこだわってキープするようにしつつ、少し脇にそれるような自由も少し多く持つということだからね。