社員に「圧倒的な当事者意識」を生む効果も…事業承継の新たなスタイルとして脚光を浴びる「MBO・MEBO」という手法【経営コンサルタントが解説】
事業承継スタイルが多様化するなかで、新たに注目されているのが「MBO・MEBO」という手法です。鈴村幸宏氏(株式会社タナベコンサルティング)によると、「MBO・MEBO」は中小企業から大企業まで、多様なニーズがあるといいます。しかし、まだまだ知らない人も多いのが実状です。本記事では、鈴村氏が「MBO・MEBO」の重要性について解説していきます。 世界「軍事力」トップ50…軍事費/軍事費GDP率1~50位<2021年>
2023年の事業承継動向は「内部昇格」が「同族承継」を上回る
帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2023年)」によると、血縁関係によらない役員・従業員を登用した「内部昇格」による事業承継が35.5%に達している。 これまで最も多かった身内の登用などの「同族承継」を上回ってトップとなっており、親族内承継から親族外承継への流れが加速しているといえる。「M&Aほか」も20.3%と増加しており、事業承継スタイルは年々多様化していることがわかる。
MBO・MEBOとは
MBO(マネジメント・バイアウト)は、会社の経営陣が株主から自社株式を買い取る手法である。経営陣のみではなく従業員の一部が買収側に立つ場合、MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)という。役員・従業員がオーナーとして会社を引き継ぐための事業承継手法であり、今後、そのニーズはますます高まると思われる。 MBO・MEBOは、役員(従業員)が自ら資金調達して株式を取得するスキームと、役員(従業員)あるいは役員(従業員)と投資家が出資して受け皿会社を設立し、その受け皿会社が銀行などの金融機関から融資を受けて当該企業の株式を取得するスキームがある。受け皿会社はその後持株会社として運営する場合もあるが、事業収益を買収資金の返済に充当するため、取得した事業会社と合併することも多い。
MBO・MEBOのメリット・デメリット
MBO・MEBOのメリットは以下である。 1.役員・従業員が経営権を保有することで、これまでの経営方針や雇用方針が継続されるため、経営の連続性や安全性が維持され、経営がより安定する。 2.経営者や従業員の経営への責任感が一層高まる。 3.時価での買い取りとなり、オーナー保有株式の現金化が可能となる。 4.上場企業の場合、MBO・MEBOによって上場を廃止することで、敵対的買収リスクが回避され、短期的な市場の声に惑わされることもなく、中長期的な経営戦略が保てる。 一方、MBO・MEBOのデメリットは以下である。 1.後継者(後継役員・従業員)に現経営者(経営陣)ほどの信用力がないことが多い。 2.後継者(後継役員・従業員)に株式の買い取り資金がないことが多い。 3.上場企業の場合、上場を廃止することで市場からの資金調達ができなくなる。 4.上場企業の場合、非上場化によって経営に対する監視機能が低下する懸念がある。 5.上場企業の非上場化やグループ企業から離脱するMBOの場合、知名度が低下したり、スケールメリットを喪失したりする懸念がある。