村上、近本の2人は、来季真価が問われるが、どちらも心配ないやろ【岡田彰布のそらそうよ】
村上と近本の激戦と思ったが意外に差が開いたよな
10代で36本塁打に96打点を挙げた村上[右]は十分な新人王や。近本[左]も盗塁王に新人安打記録も更新してるから立派な新人特別賞よ。2人とも真価は来季に問われるが、オレは2人にいわゆる「2年目のジンクス」はないと思うよ/写真=榎本郁也
もう遠い昔……。あれから39年も経つのだ。ちょうどこの時期、オレはスーツ姿でステージに立っていた。シーズンの締めくくり。各タイトルホルダーの表彰式が東京都内のホテルで開かれた。 オレは1980年、セ・リーグの新人王に選ばれた。自信はあった。当時、ライバルはいなかったと記憶している。それでも仲のいいトラ番記者に、こんなことを言われた。「これは日本全国の記者投票の結果や。やっぱり東京、在京の記者の数が多いから、安心はできん」とね。 プロ野球の定説というか、こういった投票では、在京チームの選手に有利に働く……とささやかれていたもんよ。 でも、余計な心配やったわ。文句なしに選ばれた。1980年シーズン、オレは確かに出遅れた。何もケガをしたわけではない。当時の監督の考え方というか、方針というか、ルーキーにはほとんど働き場所が与えられなかった。タイガースファン歴の長い方なら、よくご存じのはず、ブレイザー監督の起用法はホンマ、偏っていた。それでもって4月、5月になってから「どうして岡田を使わないのだ」という論調の記事が連日、紙面(誌面)を飾ってタイガースは大騒動になり、ついに5月半ばにブレイザー監督は辞任した。 代理監督になったのが中西太さんで、オレの出場機会は一気に増えた。ただ、ここまでの経緯がある。監督が辞任するという緊急事態や。「やっぱり岡田を使うべきやった」と思ってもらえるようにと、オレは相当な覚悟で臨んだものやった。 その結果、規定打席に到達し、ホームランもそれなり打った(18本)。さらに強力なライバルもいなかったし、オレはスンナリと新人王に選ばれると思ったわ。ただ、それ以上に強烈なインパクトを残したルーキーがパ・リーグにいた。それが日本ハムの木田勇さんやった。同期入団やけど、社会人(日本鋼管)からのプロ入りで、ホンマ、ドラフト1位にふさわしい内容やった(22勝8敗4S)。投手部門のほとんどタイトルを獲得し、最高殊勲選手(MVP)に選ばれたんやから、そのすごさはホンマ、語り継がれるものとなった。当然の新人王、木田さんと一緒にステージに立ち、誇らしい気持ちやった。今シーズンのセ・パ両リーグの新人王は文句なし! そう評価されたのがうれしかった。 あれから早くも40年近く、か。今年、セのMVPが坂本勇人(巨人)、パが森友哉(西武)。順当な選出で進む中、大いに注目されたのがセ・リーグの新人王争いやった。阪神の近本光司か、ヤクルトの村上宗隆か。これはなかなか難しい選考になるな……と・・・
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週刊ベースボール