荒廃農地解消に域外の力 「関係人口」延べ1000人以上 山梨・北杜市の黒森地区
企業⇔住民 橋渡しの合同会社
山梨県北杜市須玉町黒森地区で、県外から地域を支えるボランティアや企業の活動で、荒廃農地が大幅に減少した。学生時代から20年来の「関係人口」として地域を訪れるボランティアなどが、社員研修の受け入れや農場管理をする合同会社の設立に尽力。企業や住民との橋渡しを担う。 【地図で比較】農地の半分を占めていた荒廃地が数カ所に激減 2018年に設立した合同会社「黒森富苑」は、企業から委託料を受け取って、住民らが手がける農場の管理や社員研修に向けた事前準備などに取り組む。研修は4~11月に月1回、1泊2日で、遊休地の開墾や、搾油用のヒマワリ、芋、フルーツホオズキの栽培・収穫などに汗を流す。 研修で集落周辺の山林を整備し、荒廃農地の活用を広げたことで、まず地域を悩ませていた鳥獣害が減少した。営農に取り組みやすくなり、2000年ごろまで集落農地の半分近くあった荒廃農地が、昨年末には数カ所に減少した。 黒森富苑の代表を務める藤原富男さん(72)は「長年、多くの人が支えてくれた結果だ」と笑う。05年に区長に選ばれた藤原さんは、役所から農業研修を仲介するNPO法人経由で、企業などの農業研修を受け入れ始めた。
社員研修受け入れ 祭りなどにも参加
この20年間で、延べ1000人以上の関係人口が行き来した。5組の家庭が移住し、子ども9人も増えた。 同社理事の百瀬文貴さん(36)は、20年前に東京農工大の学生で立ち上げた、「黒森もりもりクラブ」のメンバー。長野で農業をしながらサポートを続ける。初代会長の弘重穣さん(43)も年3回以上は、神奈川県から訪れ、収穫や除草作業などを手伝う。 研修に利用するのは、食品流通の市場分析などを手がけるマーケティングフォースジャパン(MFJ=東京中央区)だ。横山秀樹社長は東京で生まれ育ち、11年の東日本大震災の時、初めて東京の食料調達システムのもろさを実感。危機感から地方での農作物作りを考え始めた。 研修を受け入れる合同会社の設立にも携わった横山社長は「地域の祭りなどにも参加し、交流が深まっている。今後も良好な関係を続けたい」と展望する。 (金哲洙)
日本農業新聞