故郷を桜贈り続けた「花咲か爺さん」が「竜宮城」に マグロ料理で人気、那覇市の居酒屋を閉店 コロナ禍で中断していた鳩間島での民宿開業へ「50人に減った人口を100人に戻す」
那覇市大道にあった居酒屋「花咲か爺(じい)さんの家」が10月、閉店した。「桜が咲けば、花見に人が訪れ、島は活気を取り戻す」。店主の冨里勝行さん(72)は、故郷の鳩間島(竹富町)を盛り上げるため2017年に店を構え、「花咲爺さん」の名の通り、収益の一部や客の募金を元手に島に桜を植え続けてきた。今年12月、長年の夢だった民宿「竜宮城~花咲か爺さんの家~」を島で開業予定だ。古希を超え、長年思い続けてきた冨里さんの夢も、いよいよ咲き始める。(社会部・垣花きらら) 【写真】「100円以下募金」で集まった6万円を贈呈する冨里勝行さん 会社員を退職後に開いた居酒屋は、自ら釣り上げた新鮮なマグロ料理で人気を集めた。さらにユニークな取り組みが、鳩間島に桜を咲かせようと一人1回100円以下の協力を求める「100円以下募金」。集まった計47万円は島の小学校に寄付され、植樹の資金になった。厳しい自然環境の中で21年には8本が花を咲かせ、島民と共に初の花見を楽しんだ。 戦後、600人以上に上った鳩間島の人口は現在、50人にまで減少。「いつか南で一番桜が見られる島に」。帰郷し、民宿を営むのは長年の夢だった。自身は中学卒業後に島を離れたが「生まれ育った大好きな島。自分たちの力で、絶対に人口を100人に取り戻す」と、桜祭りの開催や観光客でにぎわう島の将来を思い描く。 コロナ禍で開業予定が3年ほど延びたが、ようやく実家跡地に民宿「竜宮城」が完成。島を囲むサンゴ礁に由来し、美しい海と朝日や夕日が見渡せる絶好の立地にある。島で一日ゆったりとすごし、観光客に存分島の魅力を味わってもらう考えだ。 居酒屋の最終日となった10月19日、店には学生時代の友人や元同僚、常連客が訪れ、冨里さん自慢のマグロ料理に舌鼓を打ち、お酒を酌み交わして閉店を惜しんだ。宮古島から駆けつけた元同僚の川満勇人さん(56)は「憩いの場がなくなるのは寂しいが、夢を応援している」と再会を誓った。 冨里さんは「たくさんの方に店を愛してもらって本当に感謝している。寂しいが、これからは島興しに専念していく」と意気込んだ。今後は「竜宮城」を拠点に、活気に満ちた島を夢見て挑戦を続ける。