あなたの頭痛のもとは首の痛みかも 「片頭痛持ちの75%に首の痛み」、予防や治療法は?
治療法や予防法は
現時点では、両方の痛みに同時に効くことが保証されている治療法はない。薬を飲むこと以外では、マッサージ、鍼(はり)治療、ストレッチ、温めたり冷やしたりすること(どちらでも楽な方で)などが、首の痛みの改善に有効だとアイラニ氏は言う。人間工学的に仕事の環境を改善する工夫や、頭と首をしっかり支える枕も有効かもしれない。 首の筋肉の痛みが過敏な場所に圧力を加える筋膜リリースやストレッチも、片頭痛の痛みを軽くし、首の可動域を広げるのに有効であることが研究で示されている。 ソルマン氏のチームは最近の研究で、末梢神経に急速にパルス状の磁気刺激を与える「反復末梢磁気刺激(rPMS)」によって首の筋肉を体の外から刺激し、首の痛みを和らげている。「rPMSを繰り返し用いることで、頭痛が軽くなることも確認されています」と氏は言う。 薬物療法としては、首の痛みや緊張型頭痛あるいは片頭痛の発作の際に、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販薬を服用することができる。ただしグリーン氏は、「薬を使いすぎると痛みが悪化するので、使いすぎには気をつけてください」と言う。 アイラニ氏によると、頻繁または慢性的に起こる頭痛や首の痛みを予防するために、アミトリプチリン、ミルタザピン、デュロキセチンなどの抗うつ薬や、ガバペンチンなどの抗てんかん薬を適応外使用として用いることもあるという。 片頭痛の治療薬としては他にも、トリプタン系、ゲパント系(国内未承認)、ジタン系と呼ばれる種類の薬があり、予防薬としては、ゲパント系、β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノクローナル抗体製剤などがあるとグロスバーグ氏は説明する。 慢性の片頭痛に対して、頭痛の強さと日数を減らす目的でボトックス注射が用いられることもある。2023年12月に学術誌「Toxins」に掲載された論文では、慢性の片頭痛とさまざまな程度の首の痛みのある116人に対して、ボトックス注射の効果が調べられた。 3カ月間の追跡調査の結果、1カ月間の頭痛日数と片頭痛による生活への影響が最も大きく改善されたのは、重い首の痛みのあるグループだったが、頭痛の強さについては、すべての参加者で同様に軽くなった。 「頭痛が頻繁に起こるのであれば、予防するよう手を打つのが一番です」とグリーン氏は言う。そうすることで、首と頭の反復的な痛みのサイクルを断ち切れる可能性がある。
文=STACEY COLINO/訳=三枝小夜子