深刻化する女子のスポーツ離れ ナイキが障壁や課題を語り合うサミットを東京で開催
「女子はこうあるべき」という考えが
いまだに根付いている
パネルディスカッションでは、読売ジャイアンツの田中美羽選手と恩塚亨前バスケットボール女子日本代表ヘッドコーチ、スポーツとジェンダー領域の専門家である中京大学の來田享子教授が登壇。選手そして指導者、相談を受ける専門家としての経験談を語った。田中選手は「今夏、女子野球のクラブチームの全国大会で2連覇を遂げたが、メディアにあまり取り上げられなかった。男子だと新聞の一面を飾るのに、モヤモヤした。どうすればメディアが女子スポーツを扱ってくれるのか」と悔しさと疑問を投げかけた。來田教授によると、女子アスリートは男子に比べ、メディアで取り上げられる回数が圧倒的に少なく、中には競技に関係ない内容も多いという。また日本で女子のスポーツ参加をはばむ障壁としてジェンダー規範を挙げ、「『女子はこうあるべき』という日本で顕著に見られる考え方はまだまだスポーツの分野で根付いている」と話した。
男性指導者としてバスケットボール日本女子代表チームを支えてきた恩塚氏も、勝利のためだけに監督やコーチの言葉や指導を絶対とする傾向のある日本の古きコーチング法に警鐘を鳴らす。「女性特有とも言われるが、気持ちが変わりやすいのは人間性と捉え、一人一人理解することから始めた。『やらなきゃいけない』という意識ではなく、『かっこいいよね』というやる気や憧れを導くことが大事。選手がどうなりたいかを気持ちを理解できるコーチがもっと必要になる」。來田教授は「選手の気持ちをわかっている気になって、男子選手の場合は体罰につながることもある。性別関係なく、対話を大事にするべき」と助言した。
コーチをサポートする「COACH THE DREAM」を掲げるナイキは、今回の開催による日本での新しいコーチングガイドを発表した。これは、スポーツをする女子にとってより包括的で協力的な環境を作るためのスキルと知識をコーチに提供することを目的とする。さらにローレウス財団は、「女の子のスポーツ参加を促す指導者ガイド」を発行。子どもや若者育成のためにスポーツを活用する団体を支援してきたセンター・フォー・ヒーリング・アンド・ジャスティス・スルー・スポート(Center for Healing and Justice through Sport)が開発したガイドを参考に、日本の文化や制度などを考慮し、専門家らのアドバイスを交え制作した。「プレー・アカデミー」の公式サイトからPDF版をダウンロードすることができる。